特別養護老人ホーム(以下、「特養」)とは、福祉系の介護保険施設になります。寝たきりや認知症により生活全般に介護が必要な方で自宅での介護が困難な方が対象で原則要介護3以上になります(※参照 厚生労働省 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム))。
公的施設のため、有料老人ホームに比べ比較的安価である一方、一定の地域によっては待機者も多く、すぐに入所できない場合もあります。
比較的安価といっても一体いくらかかるのでしょうか。費用の目安はおおよそ毎月5万~15万円。
具体的には、「介護サービス費用の1割~3割」に「食費・居住費」、に「日常生活費」を加えた金額になります。要介護度や居室のタイプいよって金額が異なります。なお、前払金などの一括での支払金はありません。また、基本的なサービスに加えて、人員体制を強化したり特別な介護ケアを行った場合には介護加算サービスが発生します。
特養入所で「食費・居住費」が軽減される場合がある
特養入所時には「居住費」と「食費」がかかりますが、国が定めた基準費用額があります。例えば、多床室の場合、1日915円、ユニット型個室であれば1日2,066円。食費の基準費用額は1日1,445円。
なお、「食費・居住費」の軽減される補足給付があります。補足給付(特定入所者介護サービス費とも呼ばれる)とは、低所得者の方が施設利用が困難にならないように申請することで、公的介護保険施設の食費・居住費が軽減される制度のことです。
また、ショートステイ利用時にも適用されます。適用されるためには、本人及び世帯の収入状況と預貯金などの資産状況によって決まります。
※介護老人福祉施設とは、老人福祉法第20条の5に規定する特別養護老人ホーム(入所定員が30人以上であるものに限る。以下この項において同じ。)であって、当該特別養護老人ホームに入所する要介護者に対し、施設サービス計画に基づいて、入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話、機能訓練、健康管理及び療養上の世話を行うことを目的とする施設をいい、「介護福祉施設サービス」とは、介護老人福祉施設に入所する要介護者に対し、施設サービス計画に基づいて行われる入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話、機能訓練、健康管理及び療養上の世話をいう(※参照介護保険法第8条の27 )。
特養に入所した場合の自己負担額は?
Q.86歳の母親が特別養護老人ホームに入所した場合、お金はいくら毎月必要でしょうか。
A.所得状況や資産状況などで変わります。例えば、母親も年金収入だけで年間60万円、資産は自宅(現在空き家)と預貯金は「1,000万円」とした場合のシミュレーションをしてみます。なお、要介護5、医療費はカウントしません、住民票は特養に移しています。
厚労省によると要介護5でユニット型個室に入所した場合は、居住費約61,980円(2,066円/日)、食費約43,350円(1,445円/日)、介護サービス費(1割)約28,650円(955単位×30日=28,650)、その他日常生活費約10,000円(施設により設定されます。)で合計141,430円になります。
仮に母親が、預貯金がほとんどなく300万円はどうでしょうか。
「食費・居住費」の軽減に該当するため、居住費が1日2,066円から880円へ、食費が1日1,445円から390円へと自己負担が軽減されます。なお、高額介護サービス費(月ごとの介護サービス費が一定額を超える場合、自己負担上限額が適用される)につきましては、預貯金などの資産要件は関係ありません。この上限額は所得区分によります(例:住民税非課税世帯は約15,000円が上限)。
【具体的な費用シミュレーション】
ケース1:預貯金1,000万円の場合(補足給付なし)
- 居住費:61,980円
- 食費:43,350円
- 介護サービス費(1割負担):28,650円
- 日常生活費:約10,000円
- 合計:約141,430円
ケース2:預貯金300万円の場合(補足給付適用)
- 居住費:26,400円(880円/日)
- 食費:11,700円(390円/日)
- 介護サービス費(1割負担):28,650円
- 日常生活費:約10,000円
- 合計:約76,750円
※特養と契約になりますので、あくまでも参考金額
※お住いの自治体で要件を事前に調べておきましょう。
まとめ
特養に入所した場合の自己負担額は、居室タイプや要介護度などによって異なりますが、おおむね毎月5万円~15万円くらいを目途ではないでしょうか。また、公的介護施設には補足給付などの軽減制度もあり、該当者は、自己負担額を大きく軽減できます。ただ、地域によってはすぐに入所できない等の場合もあり、サービス付き高齢者向け住宅や有料老人ホームなども併せて検討しておくとよいでしょう。なお、利用者本人や家族の状況(身体状態、予算、地域の利便性など)を総合的に検討することをお勧めします。