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自筆証書遺言 手間が少なくなった

遺言を作成するにあたって複数あり、ここでは、もっとも一般的に利用されている「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」を比較してみます。なお、遺言では、次の3つの法律行為が行えます。

  • 財産の処分(遺贈、寄付行為など)
  • 相続に関すること(各相続人の相続分の指定、遺産分割の方法など)
  • 身分に関すること(未成年者の後見人の指定、認知など)

 

「自筆証書遺言」とは、自分で書いて作成する遺言書です。

 

一方、「公正証書遺言」とは、遺言したい内容を公証人に伝えて、それを公証人が書面にしてくれるという遺言です。おすすめは、公正証書遺言です。ただし、すぐに遺言を書いておきたい場合は、取り急ぎ、自筆証書遺言で書いておき、その後、公正証書遺言を書くという2段階でもいいのではないでしょうか。 

 

自筆証書遺言

遺言者がその全文、日付、氏名を自署し、これに押印して作成します。遺言書を書いていて、書き間違えたからといって適当に訂正したらダメです。訂正方法についても厳格な方式が定められています。

 

また、日付は、年月日を正確に書く必要があり、「〇年〇月吉日」などのように、日付の特定できない遺言は無効になります。吉日と記入してしまうと、複数の遺言書があった場合、どっちが先か後かが分からなくなります。日付は令和6年8月9日となどしっかり書きましょう。

 

 

押印は、実印でなくてもよく、認印や拇印でも構いませんが、「実印」を使うことをおすすめします

 

このように遺言を全文、自分で手書きをする必要がありましたが、改正相続法(施行日:平成31年1月13日:自筆証書遺言の方式緩和)により、財産目録については、手書きで作成する必要がなくなりました。他人による代筆やパソコン等による印字する方法、通帳のコピーも認められました。随分手間がかからなくなりました。

 

ただし、目録の各ページには、署名と押印が必要です。(参照:法務省HP) 

自筆証書遺言の書き方の注意点と確認事項

  • 財産目録を除いてすべて遺言書は自筆で書く
  • 遺言書はボールペン、万年筆などで書き、消えるボールペンや鉛筆などは使わない
  • 日付を具体的に書く(例えば、令和6年8月1日など)
  • 縦書き横書きどっちでもOK
  • 署名をして、押印をする(印鑑は実印をおすすめ)
  • 財産目録を自筆で書いてない場合は、必ず前ページに署名・押印する
  • 財産は特定できているのを確認する
  • 預貯金の場合、残高は変動するので書かなくてもよい
  • 誤字や訂正箇所はないことを確認する
  • 法定相続人には、「●●を相続させる。」と書く
  • 法定相続人以外の人には、「●●を遺贈する。」と書く
  • 財産の書き漏れを防ぐために「その他の一切の財産については、〇〇に相続させる」と書く
  • 遺留分に配慮しているか確認する
  • 共同遺言は禁止されていますので、夫婦でも別々に遺言者を作る
  • 付言事項を書くことができるが法的な効力はありませんが、思いを伝えることができるのでトラブル防止に役立つ

B【親族関係】上記のケースは、東京太郎と花子のは子供はいません。また、直系尊属もいなく、太郎には兄が一人います。遺留分は兄弟姉妹にはありませんので、遺言書を書くことによって妻の花子さんに財産すべてを相続することになります。つまり、妻が100%財産を相続し、他の相続人が相続する財産はゼロになります。なお、遺言者がない場合、法定相続分は妻花子は4分の3,兄が4分の1になります。

上記の分量でも間違えたりします。間違えて書き直すと意外と大変です

 

【コラム】

夫Aさんと妻Bさんは夫婦です。ただし、子どもはいません。また、AさんもBさんも両親や祖父母もすでに他界しています。ただ、Aさんには絶縁関係の弟Cさん、Bさんには絶縁関係の妹のDさんがいます。お互いに万一のことがあった場合、AさんもBさんも2人で作った財産はCさんやDさんには相続することを望んでいません。

 

お互いに「先に死亡した人が生存配偶者にすべての財産を相続させる」という自筆証書遺言を作成しました。

 

夫であるAさんがある日、急死しました。遺言書があるので夫Aさんの財産すべてを妻のBさんが相続しました。その後、妻のBさんが亡くなりました。妻Bさんが書いた遺言書は夫のAさんが亡くなっているので効力が生じません。Bさんは遺言書は書き換えていなかったので、Bさんの財産は法定相続人である妹のDさんがすべて相続します。

 

この場合は、次のような予備的遺言をお互いにしておけばよいでしょう。例えば、

(夫の場合)

第1条

遺言者は、優遺言者が有するすべての財産を、妻B(昭和●年●月●日生)に相続させる

第2条

万が一、遺言者より前に又は遺言者と同時に妻Bが死亡していた場合、遺言者は前条記載のすべての財産を●●に包括遺贈する。

第3条

遺言者は、本遺言の遺言執行者として、第1条の場合には妻Bを、第2条の場合には・・・・・を指定する。

妻についても夫と同じように書きます。

 

※参照 予備的遺言について 日本公証人役場

自筆証書遺言書が間違ってたので訂正したい場合

自筆証書遺言書を書いて読み返してみたら、間違っていた場合、二重線を引いて印鑑を押しただけでいいのでしょうか。訂正の方法については、民法で定められています(民法968条3項)。ここでは、東京花子の花を書き損じました。

 

  1. 原文が読めるように訂正箇所を2重線で消す。
  2. 訂正箇所に正しい文字を記入する。横書きの場合は上部に、縦書きの場合はその横に記入する。
  3. 訂正箇所もしくは近くに(署名押印に用いた印鑑)押印する(文字に重ねて押しても、元の文字は見えるようにする)
  4. 訂正箇所の欄外、もしくは、遺言書の末尾に「●行目の○〇を▲▲に訂正した。」などと付記し、署名する。

※なお、法務書ホームページ上でも訂正などがある場合は、書き直しをすすめています(遺言書の様式例③)。

自筆証書遺言のリスクを減らす方法

自筆証書遺言書のリスクを減らすのは、用紙をできる限り1枚に収めましょう。書き損じると新たに書くのはとても大変ですが、訂正などはせずに新たに書き直すことをおすすめします。また、平易な文章で書き、遺言書の保管は自筆証書遺言書保管制度」を利用しましょう。

自筆証書遺言書保管制度を利用するメリット

高齢化の進展や相続をめぐる紛争の観点から(施行日:2020年7月10日)自筆証書遺言が法務局で保管できるようになり、保管された自筆証書遺言については、家庭裁判所の検認も不要となります。自筆証書遺言のリスクを回避するためにも役立ちます。以下、自筆証書遺言書保管制度のメリットになります。

  • 適切な保管によって、紛失、偽造、改ざんなどのリスクが回避できる
  • 法務局の職員が形式上の確認をするので無効な遺言になりにくい
  • 遺言書が発見されないなどのリスクが回避できる
  • 検認手続きが必要なく、すみやかに相続手続きができる 

 ※参考 相続・遺言 政府広報オンライン

 

自筆証書遺言書保管制度を利用する際の様式の注意点

  • 用紙はA4サイズ、片面のみに記載する
  • 上側5ミリメートル、下側10ミリメートル、左側20ミリメートル、右側5ミリメートルの余白を確保の確保
  • 遺言書本文、財産目録には、各ページに通し番号でページ番号を記載する
  • 複数ページある場合でもホッチキスなどで綴じ合わせない

※参考 知っておきたい遺言書のこと。無効にならないための書き方、残し方 政府広報オンライン

自筆証書遺言書を法務局に預けるには

次のいずれかの法務局で預けることができます。

  • 遺言者の住所地
  • 遺言者の本籍地
  • 遺言者が所有する不動産所在地
  1. 申請書の記入
  2. 事前予約をする
  3. 申請する

【申請時の必要書類】

  • 自筆証書遺言書
  • 申請書
  • マイナンバーカードや運転免許証など本人確認書類
  • 本籍の記載のある住民票の写し等(マイナンバーの記載のないもの)
  • 遺言書が外国語により記載されているときは日本語による翻訳文
  • 3,900円分の収入印紙(遺言書保管手数料)

※参考 自筆証書遺言書保管制度 法務省

自筆証書遺言まとめ

自筆証書遺言は手軽で費用もほとんどかけずに作成することができます。ただし、無効になるリスクもあり、少しでも軽減できるように対策をすることが大切です。自筆証書遺言の保管は、自筆証書遺言書保管制度を利用することを強くおすすめします。

 

 ※自筆証書遺言のメリットとデメリット