貯金も年金も少なく、持ち家しかない親が万一、介護になった場合どうしょうと悩んでいませんか。
一般的には、私たち子供もそんなに経済的な余裕はなく、認知症などになった場合、在宅での介護もできないし、施設介護になれば、有料老人ホームの費用は高額で支払うことが困難だからです。
親がおおよそ70~75歳を超えたあたりから、地域包括センターや介護保険課に聞いてみたり、インターネットで低額で入れる施設などを調べて情報収集してみるとよいでしょう。
具体的には、まずは、貯金や年金が低額でも入れる介護保険施設を探してみましょう。例えば、人気の「特別養護老人ホーム(以下特養という)」です。特養は、貯金も少なく、年金も少ない方(住民税非課税世帯)には、軽減措置(補足給付)があります。しかも、特養では、有料老人ホームでは有料で負担感のある「おむつ代」が利用料金の中に含まれており、安心です。
特養などの公的介護施設ならではの補足給付
補足給付の要件は、今から3年前の令和3年8月から、資産要件が変わりました。従来は、単身の場合、預貯金等が1,000万円以下、夫婦の場合は、1,000万円加算した2,000万円以下であれば、「居住費・食費」の軽減対象でした(所得要件⇒平成27年から変更なし)。
令和3年8月からは次のようになりました。
- 年金収入等※80万円以下(第2段階)の場合、単身 650万円、夫婦 1,650万円
- 年金収入等 80万円超120万円以下(第3段階①)の場合、単身 550万円、夫婦 1,550万円
- 年金収入等 120万円超(第3段階②)の場合、単身 500万円、夫婦 1,500万円
なお、公的年金等収入金額に非課税年金を含みます。
預貯金等に含まれるものは、次のものになります。また、借金(借入金や住宅ローンなど)がある場合は、預貯金額から控除します。
- 預貯金(普通となる倍
- 有価証券(株式・債券など)
- 金・銀など(時価評価額が簡単にできる貴金属)
- 投資信託
- 現金
預貯金等の対象にならないものは、生命保険、自動車、腕時計、宝石などの時価評価額の把握が難しい貴金属、絵画、骨董品、家財などになります。
例えば、収入は年金収入のみ、預貯金はゼロ、生命保険(死亡保険1000万円)加入、80歳の独居の場合
- 老齢基礎年金60万円の方は、「年金収入60万円+その他の所得ゼロ」で第2段階
- 老齢厚生年金と老齢基礎年金合わせて100万円の方は、「年金収入100万円+その他の所得ゼロ」で第3段階①
- 老齢厚生年金と老齢基礎年金合わせて130万円の方は、「年金収入130万円+その他の所得ゼロ」で第3段階②
特養は、誰でも入所できるわけではなく、基準が原則、要介護3以上となっています。また、入所するにあたりその人の環境に応じて入所できる順番が決まりますので(緊急度合い等が考慮)待期間が長くなったりする場合もあります。
また、仮に補足給付の対象であったにもかかわらず、ご加入の死亡保険を解約して預貯金が増えると、解約返戻金額によっては、補足給付の要件を満たさなくなる場合があります。
介護費用の捻出には自宅の活用も
仮に、特養にすぐに入所できない場合、「サービス付き高齢者向け住宅」や「低額な有料老人ホーム」、「介護老人保健施設」のどの老人ホームに入所して順番待ちするか等を毎月の費用と想定期間をシミュレーションしてみると資金余裕度合いが一目でわかります。
また、子どもが2人など複数の場合は、不足額を子どもで負担し合うのか、自宅を活用して有料老人ホーム代などの介護費用に充てるのかなどの方法もあります。子供が2人の場合に、不足額が毎月20万円にもなると1人10万円の負担額となり一時でも大変です。
できれば、親のご自宅を活用して費用を捻出したほうが介護破綻を回避できるはずです。自宅を活用して費用を捻出する方法は、「リバースモーゲージ」があります。自宅を担保に融資を受けて、元本返済はせずに借入者の死亡時に自宅を売却して返済資金に充てるものです。
その他にも、「移住・住みかえ支援機構」のマイホーム借上げ制度を利用して家賃収入を得て、有料老人ホーム代等に充当するのも一つです。その他には、任意後見制度、民事信託があります。民事(家族)信託とは、信頼できる子供に自宅の管理・処分を依頼する契約を結び、いざ、認知症で判断能力がなくなり、有料老人ホームへ入居となった場合には、自宅を子供が売却できるようにしておくことも方法もあります。ただし、自宅の活用を図る上では、自宅の所有者である親が認知症などで判断能力があるうちにしなければなりません。
まとめ
貯金や年金が少なく自宅しかない親の介護も、自宅があれば活用できる方法はあります。また、役所やインターネットなどで低額な施設を探したり、子供での費用分担も視野に入れたりして、キャッシュフロー表などを作成して「介護費用の見える化」を図ることで対策が立てやすくなるでしょう。