(Q)故人が生命保険に加入していました。死亡保険金の受取人は一人息子のAさんです。また、相続人はAさん一人です。
故人は生前に借金があり、自宅も老築化しており相続放棄を考えています。相続放棄をした場合、生命保険の死亡保険金はもらえないのでしょうか。
(A)死亡保険金は、Aさんの固有の財産なので相続放棄しても受け取ることができます。
契約者・被保険者が同一の場合、死亡保険金は相続財産ではなく、Aさんの固有の財産であるため、相続放棄をしても受け取ることができます。
なお、死亡保険金ではなく、医療保険や入院保険などの給付金は受取人が故人である場合は、相続財産になるので注意が必要です。
※生命保険の契約者・被保険者・死亡保険金の受取人が誰かによって相続税ではなく、贈与税や所得税の課税対象となることがあります。
相続放棄とは
相続放棄は、原則として、相続の開始があったことを知った日から3か月以内(熟慮期間)に手続きをする必要があります。相続放棄をすることによって、故人の財産も負債も一切承継することはありません。
なお、相続放棄の手続きは、故人の最後の住所地の家庭裁判所になります。仮に、3か月以内に相続放棄をするか否かを決められない場合は、熟慮期間の伸長を申立てることも可能です。
死亡保険金は受取人の固有財産
死亡保険金は、死亡保険金受取人の固有の財産になるため、遺産分割の対象外であり相続放棄しても受け取ることはできます。ただし、死亡保険金は、相続税を計算するときにみなし相続財産となります。
例えば、遺産が5,000万円あり、死亡保険金が1,000万円、相続人は子供1人賭した場合、5,000万円に死亡保険金500万円(非課税は、500万円×1人(法定相続人))の数を加算して計算します。
相続税の計算と勘違いしている人も多いのではないでしょうか。相続税法と民法とでは、遺産の範囲が異なる点に気を付けましょう。
【特別受益には注意】
受取人が死亡保険金を受け取った場合、その金額があまりに高額である場合には、特別受益に準じて相続割合が調整されることがあります。(民法903条の類推適用)
【保険金が支払われない場合も】
故人が息子さんのために生命保険に加入していても支払われない場合があります。例えば、なお、加入後一定期間内の自殺や告知義務違反などです。
なお、告知義務違反とは生命保険会社が保険に加入するときに(被保険者の)過去や現在の健康状態などにありのままを申告してもらいますが、その申告に対して事実を伝えなかったり、事実でないことを伝えたりすること等です。
告知義務違反と保険会社から認定されると保険契約の解除や保険金が支払われなかったりする場合があります。
家族の生命保険契約を一括照会!
親が生命保険に加入している否か分からない場合は、「生命保険契約照会制度」を利用してはどうでしょうか。
「生命保険契約照会制度」は、生命保険契約の手がかりがなくて困ったときに、親族等が申し出れば、一般社団法人生命保険協会を通じて、生命保険会社42社へ保険契約の有無を一括で照会できる制度で令和3年7月から始まりました。
利用料は1名につき3,000円です。詳しくは、一般社団法人生命保険協会をご参照ください。
まとめ
被相続人が亡くなった場合、死亡保険金は受取人の固有財産です。遺産分割も必要ありません。また、相続放棄をした場合でも、相続財産ではないため死亡保険金は受け取ることができます。
ただし、生命保険に加入していた場合でも告知義務違反などで支払われない場合もあります。さらに、特別受益には注意が必要です。親御さんが生命保険に加入しているかどうか探してもわからない場合は、「生命保険契約照会制度」を利用してみてはどうでしょうか。
<関連記事>