亡くなった後に必ずあるのが遺産整理。遺された家族にとって遺産整理は大変です。特に、核家族化や少子化、高齢化などを背景に、遺族だけで遺産整理することは難しく、専門の業者さんに依頼する場合も増えているのではないでしょうか。
遺された家族のためだけではなく、ご自身のために生前整理をすることを検討しましょう。さて、生前整理では、荷物だけではなく、介護になった場合の住処、お墓、葬儀、不動産、生前贈与など多くのことがあります。
中でも、お墓の「墓じまい」についてお聞きすることがあります。
「改葬」と「墓じまい」
「改葬」とは、現在、お墓に埋葬されている遺骨を取り出して他の新しいお墓に移すことをいいます(※墓地、埋葬等に関する法律(第2条3項))。いわゆる「お墓の引越し」です。子孫などが新しいお墓を引き継ぎ、維持管理をしてくれる場合などです。
一方、「墓じまい」とは、お墓を撤去し更地にして、お墓の使用権を管理者に返却することをいいます(なお、墓じまいも法律上は改葬に含まれる)。また、「墓じまい」をした後は、遺骨を永代供養墓等に納めることになり、結果的には「お墓の引越し」といえるでしょう。墓じまいの場合は、お墓の管理は霊園やお寺が行い、維持管理者が不要である永代供養墓が代表例になります。
令和4年度の改葬件数はどうでしょうか。改葬件数は増加傾向にあり、令和4年度では全国で約15万件となっています(令和4年度衛生行政報告例(厚生労働省))。下記参照。
※平成23年度から令和4年度衛生行政報告例(厚生労働省)より作成
「改葬」や「墓じまい」が増える背景
鎌倉新書【第3回】改葬・墓じまいに関する実態調査(2024年)によると、改葬・墓じまいの検討理由のトップが「お墓が遠方にある」、次いで「お墓の継承者がいない」となっています。
つまり、「お墓のある故郷が遠く、高齢になるとお墓参りや管理もできない」ケースや、「子どもがいない」、「子どもが未婚で将来、祭祀承継する人がいない」、「おひとりさま」などです。
一般的な改葬の手順
- 家族や親せきなどの親族や現在お世話になっているお寺や霊園(移転元)に相談します。
- 墓地に誰の遺骨があり、誰の遺骨を移すのか、もしくは全部を移すのかを確認します。
- お墓の移転先を決めます。新しい墓地から「受入証明書」を発行してもらいます。
- 現在のお墓の管理者から「埋蔵証明書」を受取ります。
- 現在、お墓のある市区町村役場で「改葬許可申請書」をもらい、あわせて「受入証明書」や「埋蔵証明書」などを提出します。
- 現在、お墓のある市区町村から「改葬許可証」が交付されます。
- 現在のお墓の管理者に「改葬許可証」を提示(提出はしません)し、閉眼供養、遺骨の取り出し、墓石の撤去、返却などを行います。
- 新しい霊園、お寺の管理者に「改葬許可証」を提出して納骨します。
改葬にかかる費用
改葬・墓じまいにかかる費用はおおよそどのくらい必要でしょうか。鎌倉新書【第3回】改葬・墓じまいに関する実態調査(2024年)によると、「31万円~70万円」が最も多く24.2%となっています。ただし、価格帯の幅が広く、移転先などによって大きく変動することがわかります。
- 改葬許可証や埋葬証明書などの証明書の発行手数料
各自治体で異なっており、数百円~1,500円程度です。
閉眼供養(現在あるお墓)
おおむね3万円~10万円。ただし、離檀料が必要な場合もあります。離檀料はトラブルになる可能性があり、消費生活センターや弁護士等にご相談することをおすすめします。
- お墓の撤去費用
おおよそ20万円~30万円。ただし、墓地のある場所などによって費用が高くなる場合があります。
- 新しいお墓にかかる費用
永代供養墓であれば比較的安価な場合もありますが、一般墓になると300万円くらい必要になる場合もあります。
このようにある程度費用が掛かるため、同調査でも「やめた理由」が最も多いのは、「解体費用が高すぎた」となっています。
まとめ
「お墓のある故郷が遠く、高齢になるとお墓参りや管理もできない」、「子どもがいない」、「子どもが未婚で将来、祭祀承継する人がいない」、「おひとりさま」などの場合は、改葬や墓じまいを検討する必要があるでしょう。家族や親せきなどと話し合いをすることや、現在、お世話になっている霊園やお寺さんなどとも相談しながら進める必要があります。将来的には、永代供養墓にするか否かなども併せて検討しましょう。改葬や墓じまいに関する費用は、移転先によって大きく変わりますので、家族で納得のいくように話し合いをすることが最も重要ではないでしょうか。