終活は必要ではあるが、実施しているのは男性60代はわずか
お盆の時期には毎年実家に帰省される人も多いのではないでしょうか。親族が一同に集まる少ない機会かもしれません。
子どもが40歳~50歳以上になるとご両親も70歳以上になっている人も多く、ご両親はそろそろ終活活動もといった感じでしょうか。ただ、終活活動と言ってもなかなか腰は重いのではないでしょうか。まだまだ元気なので…考えてもいないといった感じでしょう。
楽天インサイト株式会社「終活に関する調査」(2024年1月19日(金)~1月21日(日)の3日間、楽天インサイトに登録しているモニター(約220万人)の中から、全国の20~69歳の男女1,000人を対象。)によると60代男性では「終活を実施する予定がある人」が約8割、60代女性は約9割弱となっています。ただ、60代男性では、「予定はないが時期が来たら始めたい人」が最も多く約6割5分、60代女性は約5割強となっています。実施している割合は、60代男性では5.2%、60代女性は16%で男女間で大きな開きがあります。
「終活」で今後する予定があること、興味があることをは、60代男性で「家の中の荷物整理(49.3%)」がトップとなり、「財産整理(37.3%)」、「パソコンやスマートフォンなどのデータ整理(34.7%)」、「遺言書・遺産分与の作成(28%)」と続いています。一方、60代女性では「家の中の荷物整理(65.9%)」がトップとなり、「パソコンやスマートフォンなどのデータ整理(29.5%)」、「財産整理(28.4%)」「エンディングノート・遺書の作成(28.4%)となっています。
60代で「終活」をする・したい理由は、「家族に迷惑をかけたくないから」が最も多く、次いで「病気や怪我、老化などで寝たきりになった場合に備えるため」、「自分の人生の棚卸し、整理をしたいから」(22.5%)となっています。
また、「終活」をする・したいと思ったきっかけは、「自分の健康に不安を感じたこと」最も多く、次いで「家族や大切な人が亡くなったこと」になっています。
この調査からも、終活は必要であるが、なかなか実施するまでにはいたっていないのではないでしょうか。きっかけは、「自分の健康不安」や「家族や友人など大切な人が亡くなったとき」であり、家族や友人などが元気であれば、なかなかきっかけもないのかもしれません。
よく利用される自筆証書遺言と公正証書遺言
60代男性で意識している「遺言書」について解説します。遺言書には、よく利用される「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」がありますが、最も手軽で費用のかからないのが「自筆証書遺言」です。入口が緩いということは出口は厳しいと推測はできると思います。一方、「公正証書遺言」は、遺言したい内容を公証人に伝え、それを公証人が書面にしてくれる遺言です。不備による無効の心配もなく、安全確実な遺言が作成できます。ただし、手間がかかったり、費用がかかったります。
公正証書遺言の作成手順
公正証書遺言は、公証役場で作成します。相談料は無料です。相談や作成する公証役場は、全国どこでも可能ですが、相談や実際に公証役場に行きことを考えると自宅の近くの公証役場がいいのではないでしょうか。また、事前に予約を入れて訪問するようにしましょう。
①公証人への遺言の相談や作成依頼
公正証書遺言は、弁護士や行政書士などの士業や信託銀行などに作成依頼もできますし、遺言者本人等が直接、公証役場に電話やメールをしたり、予約を取って公証役場を訪れたりして、公証人に直接、遺言の相談や遺言書作成の依頼することもできます。
②遺言書の原案を考える(事前準備)
どういう遺言の内容にするのかなど箇条書きで構いませんのでメモに整理する。
- 財産の一覧表
- 財産一覧表から誰に何を相続させるのか
③必要書類をそろえる(事前準備)
- 遺言者本人の印鑑証明書(3カ月以内に発行されたもの)
- 遺言者と相続人との続柄が分かる戸籍謄本や除籍謄本
- 相続人以外の人が財産をもらう場合は、その人の住民票
- 財産に不動産がある場合、登記事項証明書と固定資産評価証明書または固定資産税納税通知書
- 預貯金などの場合、その預貯金通帳等やその通帳のコピー
- 証人2名の氏名、住所、生年月日、職業
※参照 Q3.公正証書遺言をするには、どのような資料を準備すればよいでしょうか?/日本公証人連合会
※事案によりほかにも資料が必要になるので、詳細は公証役場で確認してください。
④証人2名を決める(事前準備)
証人は誰でもよいわけではなく、次の人は証人になれません。
- 未成年者
- 推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族
- 公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人
証人を友人以外であれば、公証役場にお願いする方法もあります。ただし、手数料が必要で公証役場によって異なりますが、1名あたりおおむね1万円程度で考えていいでしょう。
⑤遺言公正証書(案)の作成と修正
⑥遺言公正証書の作成日時の確定
⑦証人とともに公証役場に行き、遺言者を作成(当日)
遺言者本人が公証人に対し、証人2名の前で遺言した内容を口述。公証人は、それが判断能力を有する遺言者の真意であることを確認した上で、遺言公正証書(案)に基づきあらかじめ準備した遺言公正証書の原本を、遺言者および証人2名に読み聞かせ、または閲覧させて、遺言の内容に間違いがないことを確認。遺言者および証人2名が、遺言公正証書の原本に署名し、押印。公証人も、遺言公正証書の原本に署名し、職印を押することによって、遺言公正証書が完成。
⑧遺言書の完成
原本は公証役場に保管され、遺言者には正本が交付される。また、請求すれば謄本も交付される。
公正証書遺言の作成費用は?
公正証書遺言の作成には手数料がかかります。作成費用は、財産額や受け取る人の人数で異なります。
- 財産の相続または遺贈を受ける人ごとにその財産の価額を算出し、これを上記基準表に当てはめて、その価額に対応する手数料額を求め、これらの手数料額を合算して、当該遺言公正証書全体の手数料を算出。
- 全体の財産が1億円以下のときは、上記によって算出された手数料額に、1万1000 円が加算(「遺言加算」という)。
- 原本については、その枚数が法務省令で定める枚数の計算方法により4枚(法務省令で定める横書きの公正証書にあっては、3枚)を超えるときは、超える1 枚ごとに250 円の手数料が加算。また、正本および謄本の交付については、枚数1枚につき250 円の割合の手数料が必要。
- 遺言公正証書の作成が嘱託人の病床で行われたときは、上記 によって算出された手数料額に、50 %加算されることがあるほか、遺言者が、病気または高齢等のために体力が弱り、公証役場に赴くことができず、公証人が、病院、ご自宅、老人ホーム、介護施設等に赴いて、遺言公正証書を作成する場合には、公証人の日当と、現地までの交通費が必要。
例えば、
①4000万円の財産を相続人2人にそれぞれ2000万円ずつ相続させる場合
1000万円から3000万円以下なので、23000円になります。
- 作成費用23000円×2人=46000円
- 遺言加算11000円
合計57000円+用紙代(正本または謄本1枚につき250円)
②6000万円を相続人3人にそれぞれ2000万円ずつ相続させる場合
- 作成費用23000円×3人=69000円
- 遺言加算11000円
合計80000円+用紙代(正本または謄本1枚につき250円)
③8000万円を相続人1人が全部相続する場合
- 作成費用43000円×1人=43000円
- 遺言加算11000円
合計54000円+用紙代(正本または謄本1枚につき250円)
※①~③すべて主張してもらうと、日当2万円(4時間以内は1万円)旅費は実費、病床執務加算は作成費用の2分の1を加算
まとめ
終活、必要性はわかっているが、まだまだ元気だから…なかなかすすまない人も多いのではないでしょうか。お盆で家族一同が集まる機会やご自身の健康不安などがあればすぐにでも始めたらどうでしょうか。そのうちの一つに遺言書があります。主な遺言には、費用があまりかからずに簡単な自筆証書遺言、一方、遺言したい内容を公証人に伝え、それを公証人が書面にしてくれる遺言で、不備による心配もなく、安全確実な遺言が作成できる公正証書遺言があります。ただし、手間がかかったり、費用がかかったります。せっかく作った遺言が無効になれば、作った意味がありませんので、そのようなリスクの少ない公正証書遺言がおすすめです。