有料老人ホームを選ぶときには、きれいなパンフレットを見るのではなく、重要重要事項説明書を読み解くことが必要です。パンフレットはお客様に興味を抱いてもらうための「集客のための資料」だからです。パンフレットよりも重要事項説明書を読むことのほうが何倍にも有益です。事業者は入居希望者に契約書とは別に重要事項説明書を説明し、交付する義務があります。ただ、読み慣れていないので、難解に感じるのではないでしょうか。読むにあたって最低限のポイントを2回にわたって確認していきます。
有料老人ホームの類型、事業主体と施設の概要
- 有料老人ホームの類型・表示事項(例)
類 型 |
① 介護付(一般型) |
居住の権利形態 |
利用権方式 |
利用料の支払方式 |
月払い方式 |
入居時の要件 |
② 混合型(自立含む) |
介護保険の利用 |
特定施設入居者生活介護(一般型) |
居室区分 |
定員1人 |
介護に関わる職員体制 |
③ 3:1以上 |
① 「介護付き有料老人ホーム」か「住宅型有料老人ホーム」かを確認します。介護付き有料老人ホームの場合は、介護保険サービスが包括サービスのため要介護度に応じて一定ですが、住宅型有料老人ホームであれば、外部の事業者を使うため介護保険サービスは使ったら使った分だけ費用が増えますので、資金計画においては慎重に検討する必要があります。
② 入居者の状態になります。要支援や要介護などの状態です
③ 職員体制は、3:1以上が最低基準です。入居者3人に対して職員が1人になります。充実したサービスを受けるためには例えば、2:1など職員の比率が高いほうが充実していますが、料金が高くなります。住宅型にはこの項目はありません。
事業主体(例)
名称 |
④ 法人等の種別 営利法人 |
主たる事務所の所在地 |
東京都〇〇区・・・・・・・・ |
・・・・・・・・・・ |
・・・・・・・・・ |
主 な 事 業 等 |
⑤ 訪問介護、通所介護 |
④ 営利法人は株式会社など営利目的の法人になります。そのほかには医療法人や社会福祉法人があります。
⑤ その他の介護保険サービスが記載せれており、他に行っているサービスが分かります。また、具体的にサービス内容、名称、所在地が記載されています。
事業所概要(例)
名 称 |
有料老人ホーム〇〇 |
所 在 地 |
東京都…… |
連 絡 先 |
03-××××-×××× |
ホ ー ムペ ー ジ |
http:// |
介 護 保 険 事 業 所 番 号 |
⑥ 第×××・・・・・号 |
管 理 者 職 氏 名 |
施設長 〇〇 〇〇 |
事 業 開 始 年 月 日⑧ |
平成〇〇年〇月〇日 |
届 出 年 月 日 |
平成〇〇年〇月〇日 |
届 出 上 の 開 設 年 月 日 |
平成〇〇年〇月〇日 |
特定施設入居者生活介護 |
平成〇〇年〇月〇日 |
介護予防特定施設入居者生活介護 |
平成〇〇年〇月〇日 |
事 業 所 へ の ア ク セ ス |
⑦ JR中央線「西荻窪駅」から徒歩10分 |
⑥ 介護付き有料老人ホームのように特定施設の指定を受けている施設は必ず介護保険事業所番号があります。
⑦ 徒歩での時間は、道路距離80メートルを1分で表示しています。高齢者は歩くスピードが遅くなりますのでもう少し時間がかかることが想定されます。
⑧ 事業開始年月日と建物の竣工日に数年~数十年の開きがあると、竣工時には、社員寮
などで使われていたものが現在、有料老人ホームとして使われており、建築コスト等
が安く済んでいると推測できます。
従業員に関する事項(例)
(1-1)
常勤換算人数が重要です。常勤換算人数とは、常勤専従を1人と数え、非常勤職員の勤務
時間が常勤専従職員何人分になるかを表したものです。
サービスの手厚さは、単純な人数の合計ではなく常勤換算人数で判断します。
(1-2)
サービスの質をみるうえで、資格者数が手掛かりになります。なお、延べ人数なので1人
が複数取得している場合もあります。
(1-3)
介護保険法上、介護付有料老人ホームは、夜間の人員は最低1名以上いればよいことにな
っています。一般的に入居者の人数と夜勤の職員数の割合が「30:1」であれば安心ラ
インだと考えられています。
(1-4)
本事業所における勤続年数で、事業開始から年数がある程度経っているのもかかわらず、
勤続年数が浅い人しかいないのは要注意。コロコロ入れ替わっている可能性があります。
見学時には、理由などを聞いてみましょう。
サービス内容
(2-1)
どのような医療的なケアであればホーム内で可能かを確認しましょう。
(2-2)
持病がある場合は、協力医療機関で対応可能かどうか、ホームから協力機関が月に何回き
てくれるのか、協力医療機関の行くのにタクシー使うとどのくらい費用がかるのか、など
確認しましょう。
(2-3)
入居者・身元引受人の要件などが確認できます。
(2-4)
どのような状態になったら介護室に移動するのか、移動先は同じホームなのか、それとも
提携先のホームなのか、また、利用料金に変更はあるのか、移動前の居室の原状回復費な
ども支払うのかなど確認しましょう。
(2-5)
苦情の窓口が施設内だけなのか、それとも外部の窓口も明記されているのか確認しましょ
う。
(2-6)
賠償責任保険の保障範囲を確認しておきましょう。また、加入していない場合は、万一の場合の危機管理に疑問を感じることもあるでしょう。
まとめ
有料老人ホームを選ぶときにパンフレットだけで判断するのではなく、重要事項説明書を読み込むことが大切です。また、必ず訪問してお話をききましょう。重要事項説明書は、見学する前に一度、ご自身で読み込み疑問点を整理し、老人ホームに見学に行ったときに、重要事項説明書の疑問点を遠慮なく施設長などに聞いて納得することが重要です。利用者一人で訪問するのではなく、家族や第三者等と一緒に行くことによって利用者自身が見落としている部分も客観的な視点から見ることができます。有料老人ホームを選ぶために、肉体的にも精神的にも大変です。しかも高い買い物になりますので、安易に紹介業者や仲介業者などからすすめられるままにならないように自己防衛する必要があるでしょう。
※公益社団法人 全国有料老人ホーム協会の重要事項説明書の見方が更新されています。
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