有料老人ホームを選ぶときには、きれいなパンフレットを見るのではなく、重要事項説明書を読み解くことが必要です。パンフレットはお客様に興味を抱いてもらうための「集客のための資料」だからです。パンフレットよりも重要事項説明書を読むことのほうが何倍にも有益です。事業者は入居希望者に契約書とは別に重要事項説明書を説明し、交付する義務があります。重要事項説明書は、契約書とは違ってわかりやすい文章で書かれていますので、その中でも最低限のポイントを確認しましょう。今回は、入居者の属性や退去理由など、利用料金等を中心にしています。
入居者
年齢分布や要介護度が記載されています。利用者が年齢がまだ若い場合などは、平均年齢が高かったり、要介護度が高い人ばかりだったりすると施設の雰囲気になじめない場合もありますので、留意しましょう。
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自立 |
要支援1 |
要支援2 |
要介護1 |
要介護2 |
要介護3 |
要介護4 |
要介護5 |
65歳未満 |
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65歳以上75歳未満 |
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1 |
× |
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75歳以上85歳未満 |
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3 |
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× |
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85歳以上 |
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× |
3 |
8 |
× |
× |
× |
合計 |
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× |
6 |
9 |
× |
× |
× |
入居継続期間別入居者数 |
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(1-1) 入居期間 |
6月未満 |
6月以上 1年未満 |
1年以上 5年未満 |
5年以上 10年未満 |
10年以上 15年未満 |
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入居者数 |
×× |
×× |
×× |
×× |
×× |
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(1-2)入居率(一時的に不在となっている者を含む。) |
86% |
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(1-3)直近1年間に退去した者の人数と理由 |
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理由 |
人数 |
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(1-1)
運営機関が長い施設において、入居期間が長い人が多いということは、一般的には、施設の対応などが良いと推測できるでしょう。
(1-2)
有料老人ホームの入居率の損益分岐点は85~90%と言われています。開設して一定年数以上が経って、入居率が低い場合は、経営状態が良くない可能性があります。
(1-3)
退去した人の理由が、「自宅・家族同居」、「そのほかの有料老人ホーム」、「その他」など多い場合は、面談時になぜ退去したのか理由などを聞いてみましょう。
利用料金
(2-1)家賃及びサービスの対価 |
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プランの名称 |
前払金 |
月額利用料 |
内訳 |
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家賃 |
管理費 |
介護費用 |
食費 |
光熱水費 |
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×× |
×× |
×× |
×× |
×× |
×× |
×× |
〇〇 |
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前払金の取扱い |
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(2-2)償却開始日 |
入居日 |
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返還対象としない額 |
あり ●●円~●●円 |
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利用料金は入念に確認する必要があります。必ず疑問点があれば確認しましょう。
(2-1)
プランの他に、前払金、家賃、管理費、介護費用、食費、光熱水費の内訳、明細を一つ一つ確認する必要があります。特に管理費や介護費用などに何が含まれていて、何が対象外になっているのかなどを確認しましょう。
(2-2)
返還対象としない額が記載されています。例えば、初期償却率30%(初期償却額の割合で、入居後3カ月を経過すると返金されません)の場合、前払金が1000万円であれば300万円が控除された金額が償却期間で償却されることになります。具体的には、前払金1000万円、初期償却率30%、償却期間が5年とした場合、2年で退去した場合は、いくら戻ってくるでしょうか。
償却期間満了前に契約が終了した場合、次の算式により返還金が求められます。返還金=(前払金-初期償却額)÷(償却期間)×(償却期間-経過月数)。よって、初期償却額は、1000万円×30%=300万円。残りの700万円を5年で償却するので、1年間あたり700万円÷5年で140万円。2年間で退去するので280万円。戻ってくるお金は420万円になり、半分以下になります。初期償却がなければ、1000万円÷5年で200万円/年。
2年間で400万円なので600万円戻ってくるのですが。施設に入るときは、退去理由が、自宅などが多い場合は、施設長に理由を積極的に聞いてみましょう。
入居希望者等への事前の情報開示
入居希望者に交付 (交付希望者のみ) |
(3-1)財 務 諸 表 の 要 旨 |
入居希望者に交付 (交付希望者のみ) |
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管 理 規 程 |
入居希望者に交付 (交付希望者のみ) |
財 務 諸 表 の 原 本 |
公開していない |
事 業 収 支 計 画 書 |
公開していない |
そ の 他 開 示 情 報 |
なし |
(3-1)
有料老人ホームも経営危機で倒産などあります。経営基盤の脆弱な有料老人ホームには注意が必要です。そのためにも可能であれば財務諸表を3年間分(もしくは2期分)見せてもらいましょう。内容が分からない人は、貸借対照表の純資産が前期に比べて増えている、損益計算書で利益がプラスになっているかなどだけでも確認しましょう。非公開のところも多くあり、判断が難しい場合もあります。大手の有料老人ホームが民事再生法を適用した事例があります。
介護サービス等の一覧表
介護サービス |
自 立 |
要支援1・2 |
要介護1~5 |
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利用料に含む |
含まない |
利用料に含む |
含まない |
利用料に含む |
含まない |
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〇〇 |
◎ |
|
◎ |
|
◎ |
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おむつ代 |
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実費 |
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実費 |
|
実費 |
買い物代行 |
週1回 |
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週1回 |
|
週1回 |
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どのサービスが有料で、何回までだったら含まれているかなどを確認しましょう。また、利用者が希望するサービスが有料か無料かも合わせて確認しましょう。
まとめ
有料老人ホームも経営基盤の脆弱な場合は、注意する必要があります。有料老人ホームを選ぶときは、資金計画も必須です。完璧に計画を立てることは無理ですので、想像できる範囲で検討してみましょう。また、重要事項説明書だけではわからない部分もありますので、必ず訪問して、できれば体験入居することもおすすめします。家族などはすぐにでも入居してもらいたいと考えますが、施設の雰囲気などもあり候補を2~3あげて検討しましょう。また、時間がないなどの場合は、終活支援をしている行政書士などの専門家に老人ホーム選びを相談してみてはどうでしょうか。
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