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財産管理等委任契約と任意後見契約の違い

財産管理等委任契約と任意後見契約は、どちらも財産管理するための手段ですが、その目的や仕組みには明確な違いがあります。

 

財産管理等委任契約は日常的な財産管理を目的とし、任意後見契約は将来の認知症など判断能力の低下に備えた財産管理を見据えています。

 

 

財産管理等委任契約は、当事者がその効力の発生について特に条件を設けなければ、契約の成立とともに効力が発生します。一方、任意後見契約は、任意後見監督人の選任によって効力が発生するため、それまでは効力は発生しないということです。

 

特に高齢者の場合は、財産管理等委任契約を結ぶ場合であっても、将来、認知症などで判断能力が低下した場合に備えて任意後見契約を同時に結ぶ「移行型」が理想的ではないでしょうか。

財産管理等委任契約

判断能力ある方が、傷病などにより「車いす生活」や「寝たきり状態」などで自らの財産管理や日常の事務等が困難となる場合に備えて、信頼できる人に、自分の生活、療養看護や財産管理に関する事務について代理権を与える契約です。

任意後見契約

判断能力の低下に対処する制度には成年後見制度があります。成年後見制度には、「法定後見制度」と「任意後見制度」があります。法定後見制度はすでに判断能力が不十分な状態にある人を保護・支援する制度です。

 

任意後見契約は、判断能力のある方が、将来、認知症などにより意思表示ができなくなった場合に備えて、財産管理や身上保護を代理してもらう人を予め選んでおくこと(ご自身で信用できる人に依頼する)のできる契約です。

 

任意後見契約には「将来型」、「移行型」、「即効型」の3つの類型があり、最も多く利用されているのが「移行型」です。「移行型」は、財産管理等委任契約を結び、将来判断能力が低下した段階で任意後見契約に移行させる類型です。

 

任意後見契約は、公正証書で結ぶ必要があり、費用としておおよそ2万円~3万円が必要になります。また、効力が発生するためには、家庭裁判所に任意後見監督人選任の申立てをする必要があります。つまり、任意後見契約を結んだだけではまだ効力はないということです。

 

なお、監督人がつくと財産額によりますが、毎月1万円~2万円の費用がかかります。任意後見監督人の職務は、主に任意後見人の事務を監督し、その事務に関して家庭裁判所に定期的に報告することになります。

 

また、被後見人の財産を生前贈与や収益物件の購入、相続対策にあてることはできません。なお、任意後見人には取消権がないため、例えば、本人が贈与を行った場合でも任意後見人が取り消すことはできません。ただし、任意後見が開始されている以上、事理弁識能力が不十分な状態であることが前提となるため贈与は無効というリスクは否定できません。

 

なお、申立ての取り下げには審判がなされる前であっても家庭裁判所に許可を得る必要があります。

まとめ

財産管理等委任契約は、判断能力は低下していないが、体が不自由なため自分で銀行等行ったりすることができない場合に備えて、信頼できる人に自分の生活、療養看護や財産管理に関する事務について代理権を与える契約。任意後見契約は、将来認知症などで判断能力が低下した場合に備えて財産管理や身上保護を代理してもらう人を予め選んでおくことのできる契約です。

特に高齢者は、財産管理等委任契約と任意後見契約をセットで締結しておくとと安心ではないでしょうか。