介護が始まると家計が圧迫される?

親の介護は突然始まることが多く、多くの人が「お金がどんどん減ってしまうのでは?」と不安になります。
実際に介護には毎月の費用がかかり、長期間続く可能性が高いため、家計の負担が増えるのは事実です。
生命保険文化センター「2024(令和6)年度 生命保険に関する全国実態調査」によると、介護期間の最も多いのは「4~10年未満」で27.9%、10年以上も14.8%となっています。
つまり、4年以上の介護が続くケースは全体の42.7%にのぼり、4割強の家庭で中・長期的な負担が発生していることが分かります。
しかし、大切なのは 「お金を適切に使うこと」 です。
すべての資産を介護費用に使ってしまうと、後々「生活費が足りない」「施設入居が必要なのに貯金がない」といった問題が発生します。
逆に、節約しすぎると子どもの負担が増し、親も子も苦しむことになりかねません。
そこで今回は 「使うお金・守るお金」 の考え方をご紹介します。

まずは親の資産を把握しよう
お金を上手に管理するためには、まず 親の資産を把握すること が重要です。
【確認すべき親の資産】
- 預貯金の残高(普通預金、定期預金など)
- 年金収入(公的年金、企業年金、個人年金)
- 不動産資産(持ち家、賃貸物件など)
- 保険の内容(民間介護保険や医療保険の支払要件)
- 有価証券(株式、投資信託など)など
「親のお金をどう管理すればいいかわからない…」という場合は、最低限 「銀行口座の残高」「年金の収入額」「毎月の生活費」 を把握しておきましょう。

「使うお金・守るお金」を分ける方法
親の資産を把握したら、どのお金を介護費用に使うかを決めることが大切です。お金の使い道を「使うお金」と「守るお金」に分けて考えましょう。
- 使うお金(介護費用に充てる資金)
まずは、親自身の収入や資産を優先して使うのが基本です。子どもが無理に自己資金を出す必要はありません。
【使うお金の主なもの】
- 親の年金収入 → 毎月の介護費用(生活費含む)に充てる
- 預貯金 → 生活費や介護費用が不足したときに活用
- 介護や医療向けの貯蓄・民間保険 → 事前に準備していた資金や保障
しかし、親の資産だけでは足りない場合、子どもが負担せざるを得なくなるケースもあります。そのリスクを防ぐためにも、公的な軽減制度や税控除を最大限活用することが重要です。
- 子どもが介護費用を負担するリスク
親の資産だけで足りないからといって、子どもが自己資金を出し続けると、次のようなリスクが生じる可能性があります。
- 子ども自身の生活が圧迫される → 住宅ローンや教育費、生活費に影響し、家計が苦しくなる
- 老後資金が不足する → 介護費用を負担し続けると、自分の老後に必要なお金を確保できなくなる
- 兄弟姉妹間で不公平が生じる → 介護費用を負担した子どもだけが金銭的負担を抱え、相続時のトラブルにつながる
こうしたリスクを避けるためにも、親の資産を優先して活用し、子どもの負担を最小限に抑えることが大切です。
- 守るお金(将来のために確保すべき資金)
介護費用の支払いばかりに意識が向くと、将来必要なお金まで使い込んでしまう可能性があります。長期的な視点で計画的にお金を管理することが大切です。
また、介護費用にお金をかける場合は、「財産を遺さない」「葬儀費用などを最小限にする」 など、他の支出を調整することも考えましょう。限られた資金をどのように使うかを慎重に判断することが重要です。
【守るべきお金の例】
- 将来の医療費(差額ベット代など)
- 施設入居費用(有料老人ホームの入居一時金など)
- 家や土地などの不動産資産(安易に売却すると、親が自宅に戻れなくなる可能性があるため注意)
「とりあえず貯金を全部使おう」と考えると、後々大きな出費が発生したときに対応できなくなることもあります。親の不動産を売却する場合は、親の意思を確認し、納得してもらうことが重要です。

介護費用を節約する3つのポイント
家計を守るためには、「使うお金」だけでやりくりする工夫も必要です。
① 介護保険サービスを活用する
公的介護保険を利用することで、自己負担が1割〜3割に抑えられ、家計の負担が大きく減ります。
親が介護サービスを嫌がることもありますが、家族全員にとって有益な選択肢となるため、前向きに考えてみましょう。
② 軽減制度・税控除、お住いの自治体の独自の制度などを活用する
- 高額介護サービス費
- 高額療養費制度
- 高額介護合算療養費
- 補足給付
- 特別障害者手当
- 医療費控除
- 障害者控除(障碍者手帳のない人は障害者控除対象者認定書を申請)
- 高齢者訪問理美容サービス(自治体独自サービス杉並区例)
- 介護用品の支給(自治体独自サービス例)
※参考 サービスにかかる費用 厚生労働省
③ 親のお金の管理を家族で話し合う
「誰が親の資産を管理するのか」「介護費用をどう分担するのか」を早めに話し合うことで、後々のトラブルを防げます。
認知症が進行すると 親が自分でお金を管理できなくなる ため、民事信託や任意後見制度の活用も検討しましょう。
これらの方法を実践することで、介護費用を効率的に節約し、家族全員が安心して過ごせる環境を作ることができます。
※参考 日本公証人連合会 任意後見制度
まとめ
親の介護が始まると、「お金が減る」という不安がつきまといます。しかし、
- 親のお金を「使うお金」と「守るお金」に分ける
- 介護保険サービスや軽減制度・税控除・自治体独自のサービスなどを活用する
- 家族でお金の管理を話し合う
この3つを意識することで、家計の負担を抑えつつ、親の介護をしっかり支えることができます。
「親の介護でお金が不安…」と感じたら、まず 「今すぐ使うお金」と「将来のために残すお金」 を整理してみましょう。