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老後の健康を守るための資産準備と医療費・介護費用対策

60歳を迎える前後、健康への不安が高まると同時に、老後の生活を支えるための資産準備にも焦点を当てるべき時期です。

 

年齢を重ねるごとに、健康維持や病気への備えが不可欠になります。

 

しかし、どれだけ気をつけていても、老後には予想以上の医療費や介護費用が必要になることがあります。

 

そこで、今回は老後の健康を守るための資産準備と医療費・介護費用対策について、ライフプラン作成を中心に具体的な方法を考えてみましょう。

健康維持のための資産準備

老後を健やかに過ごすためには、健康維持のための予算も重要です。

 

運動や食事、人間ドッグなどの定期的な健康診断に投資することで、病気の予防や早期発見につながりますが、これには一定のコストがかかります。

 

特に、人間ドッグや医療費などの自己負担部分、定期的な運動を行うためのフィットネス関連の支出など、老後には予算を見込んでおくことが賢明です。

 

たとえば、フィットネスやジムに通う費用は、健康維持に役立つだけでなく、心身の健康を保つためにも有効です。

 

ウォーキングや軽い運動を自宅で行う方法もありますが、ジムやフィットネスクラブに通うことで、専門家による指導を受けながら運動できる点が大きなメリットです。

 

また、定期的な人間ドッグなどの健康診断も欠かせません。

 

年齢が上がるにつれて、病気や疾患のリスクが高まりますが、早期に発見して対処することで、治療費などを抑えることができます。

ライフプランとキャッシュフロー分析

老後に向けて最も大切なのは、ライフプランを作成し、キャッシュフロー分析を行うことです。

 

これによって、必要な資産準備が明確になり、どれくらいの医療保険や民間介護保険が必要かを判断することができます。

 

十分な資産があれば、保険が不要な場合もありますが、そのためには現在の生活費や将来の支出、予想される医療費や介護費用を正確に把握し、計画的に準備を進めることが重要です。

 

たとえば、キャッシュフロー分析を行うことで、年金や資産運用の状況を踏まえ、老後に必要な資産額を把握できます。

 

これにより、必要な保険の種類や金額、資産運用の方針が明確になります。

 

不足額が大きければ、高いリターンを求める資産運用が必要となり、リスクも高くなります。そのため、リスクの許容範囲や求めるリターンをしっかり確認することが大切です。

 

これにより、無駄な保険料を避け、効率的に資産を増やすことができます。

医療費・介護費用対策の基本

老後の不安要素の一つに医療費があります。高齢になると医療機関を訪れる回数が増え、その分、医療費も増加します。

 

医療費は、原則1割から3割負担ですが、医療費以外にも予期しない支出がかかることがあります。例えば、差額ベッド代がその一つです。

 

ある方から、がんで入院した際の体験を聞いたことがあります。その方は、認知症の症状がひどく、大部屋では他の患者さんに迷惑をかける可能性があるため、病院から個室を勧められました。

 

しかし、この個室には差額ベッド代がかかり、予想外の出費が発生したそうです。その結果、経済的に非常に厳しくなったとのことです。

 

このような予期しない支出に備えるためには、事前に準備をしておくことが非常に重要です。

 

差額ベッド代やその他の追加費用などは、医療保険や貯蓄、資産運用を通じてカバーできる場合があります。

 

ライフプランを作成し、キャッシュフロー分析を行うことで、どれだけのお金が必要か、どの部分にどのような費用がかかるのかを明確にし、万が一の出費に備えることができるのです。

 

また、老後に備えるためには、健康維持だけでなく、介護費用の準備も重要です。

 

自分自身だけでなく、配偶者やご両親が介護を必要とする可能性もあります。もし介護が必要になった場合、金銭的な準備がないと生活が困難になることもあります。

 

生命保険文化センターの2024年度「生命保険に関する全国実態調査」によると、介護にかかる費用は一時的な費用(住居改造や介護用ベッドの購入など)が平均47万円、月々の介護費用(公的介護保険サービスの自己負担費用を含む)が平均9万円です。

 

介護が始まってからの期間(介護中の方は経過期間)は平均55ヶ月となっています。これを単純計算すると、合計で542万円になります。

 

また、介護を行う場所による費用差もあります。

 

「在宅介護」の場合、月々平均5.2万円かかりますが、「施設介護」の場合は月々平均13.8万円(15万円以上が約2.7人に1人)で、両者の差は月8.6万円、年間で約103.2万円にもなります。

 

※ 参考 生命保険文化センター「2024年度生命保険に関する全国実態調査」

 

経済的な負担を軽減するために在宅介護を選ぶ場合でも、家族が施設介護に切り替える目安としては、自分でトイレに行けなくなったときが一つの基準になるかもしれません。

 

介護費用を準備するためには、まず公的な介護保険制度を理解し、適切なサービスを利用することが大切です。また、最初に相談すべきは地域包括支援センターです。

 

さらに、認知症などで判断能力が低下する前に、民事信託や任意後見制度を活用して、将来のトラブルを防ぐことが重要です。

 

さらに、自己負担が軽減される制度も活用しましょう。

高額療養費制度は、医療費が高額になった場合に自己負担額を一定額に抑える仕組みです。

 

自己負担限度額は、年齢や所得に応じて異なりますが、医療費が大きな負担になりがちな高齢者にとって非常に助かる制度です。

 

制度をしっかりと理解し、利用できる場合は最大限活用することが重要です。

  • 高額介護サービス費制度

高額な介護サービス費用を軽減するための支援があります。介護サービスを受ける際に、自己負担額が一定の限度を超えると、その超過分が払い戻される仕組みです。

 

この支援を利用することで、長期的に介護が必要な場合でも、費用面での負担を軽減できます。

  • 高額介護合算療養費制度

高額療養費制度と高額介護サービス費の自己負担額の両方を合算して、医療費と介護費用の自己負担額を一定額に抑える仕組みです。

 

これらの制度を理解し、上手に活用することで予想外の支出に備え、安心して老後を迎える準備ができます。

 ※参考 サービスにかかる費用 厚生労働省

 

また、現在加入している医療保険や民間介護保険が老後に合わない場合、早めに見直して必要な保障内容を確認しておくことも大切です。

老後資金の準備とバランスの取れた支出管理

老後資金の準備は、安定した老後生活を送るための基盤となります。年金だけでは生活が難しい場合、資産運用や貯金の見直しが必要です。

 

現役時代と違って収入が減少するため、生活費の見直しや支出のバランス管理が重要です。生活費の中でも割合の大きい固定費、例えば、スマホ代金や保険料、サブスクリプション費用などを見直すことが効果的です。

 

これらの費用は意外と高額になることがあり、無駄な支出を抑えるためには、不要な契約の解約やプランの変更を行うことが求められます。

 

加えて、医療費や介護費用を予測しておくことも欠かせません。定期的な積立や投資信託を活用し、長期的に安定した運用を目指すことが、老後資金を増やすための一つの方法です。

 

また、生活水準を過信せず、生活費の節約や資産運用の効率を高めることが重要です。資産の運用は、リスク管理を徹底し、年齢に応じた運用方針を考えながら行うことが理想的です。

 

老後の収入が年金や預金、資産運用から得られるように計画的に準備を整え、支出をコントロールすることが、安定した生活を実現するための鍵となります。

まとめ

老後の健康を守るためには、医療費対策や介護費用の準備が欠かせません。ライフプランを作成し、キャッシュフロー分析を行うことで、必要な資産運用や保険の見直しが明確になります。

 

早期にこれらの対策を始め、適切な資産管理を行うことで、安心して老後を迎えることができます。今からできることを少しずつ始め、心身ともに健やかな老後を過ごす準備を整えていきましょう。