· 

特養の費用が分かった。でも、うちの家計でどう払う?

特養の費用はどのくらいかかるのか?

特別養護老人ホーム(特養)の費用について調べると、「月額5万円~15万円」といった情報が出てきます。

 

しかし、実際に自分の親が入る場合、本当にこの金額で済むのか、親の年金だけで足りるのか、足りない場合どうやって補えばいいのか、といった疑問が出てくるでしょう。

 

公的機関では「特養の費用の目安」は教えてくれますが、「うちの家計でどう払えばいいか」は教えてくれません。

 

この記事では、「あなたの家計でどう準備するか?」について考えていきます。

 

 

特養の費用は、原則、入所者の「収入や資産」、「要介護度」、「多床室か個室か」などによって異なります。

 

一般的には、「要介護3~要介護5」の場合、日常生活費約1万円を含めて月額約10万円~15万円、年額約120万円~180万円とされています。

 

ただし、これはあくまで平均的な目安であり、所得等が低い場合は補足給付によって軽減される場合があります。

 

また、施設によって介護サービス加算などがあり、多少異なります。

 

まずは親の収入や資産状況を整理し、特養の費用がどれくらいかかるのかを把握することが大切です。

親の年金で特養の費用をまかなえるのか?

親の年金だけで特養の費用をまかなえるかどうかは個人差があります。

 

一般的な年金収入は、国民年金のみであれば月5万~6万円、厚生年金がある場合は月10万~15万円程度です。

 

例えば、特養の月額費用が12万円かかる場合、年金が6万円の人は毎月6万円の不足、年間では72万円の不足が生じます。

 

年金が10万円であれば毎月2万円、年間24万円の不足になります。

 

逆に、15万円の年金があれば、毎月3万円の余裕が出ることになります。

 

親の年金だけで足りるかを確認し、不足額がある場合は次のステップに進みましょう。

 

親の貯金や子どもの負担で捻出する方法

 

親に貯金がある場合、まずはそこから介護費用を賄うのが原則です。

 

例えば、貯金が500万円あると仮定し、毎月の不足額が5万円の場合、おおむね8年分はカバーできます。

 

しかし、介護期間が10年以上に及ぶ人は全体の約14.8%いることが、生命保険文化センターの「2024年度生命保険に関する実態調査」でも報告されています。

 

そのため、貯金が底をつくリスクを十分に考慮し、長期的な資金計画を立てることが重要です。

 

また、親の貯金や年金だけでは介護費用を賄えない場合、子どもが不足分を負担するケースもあります。

 

兄弟がいる場合は、負担額をシミュレーションし、どのように分担するかをお互いの経済状況を考慮して十分に話し合うことが大切です。

 

例えば、

  • 毎月の不足額が5万円の場合、兄弟2人で分担すると1人あたり25千円
  • ただし、親の身の回りの世話をしている兄は2万円、弟は3万円負担するなど、状況に応じた分担も可能
  • 相談者の中には、2人兄弟で親の介護をしている弟が1万円を上限とし、遠方に住んでいる兄が残りの全額を支払う取り決めをしているケースもあります。

 

一度決めた負担割合も、家族の状況が変わる可能性があるため、定期的に見直しながら柔軟に対応することが望ましいでしょう。

 

※参考 生命保険文化センター

親の資産や軽減制度の活用

親の資産を活用することで、介護費用を確保する方法もあります。

 

例えば、持ち家などの不動産を売却したり、賃貸に出したりすることで資金を得ることができます。「リバースモーゲージ」や「リースバック」といった制度は、住み続けながら資金を調達することも可能です。

 

また、これらの制度は、契約内容によっては残された配偶者が住み続けることができる場合もあります。

 

そのため、事前に条件をよく確認し、将来的な住居の確保についても考慮することが大切です。

 

さらに、一般社団法人移住・住み替え支援機構が提供する「マイホーム借上げ制度」を活用すれば、シニア世代の持ち家を賃貸に出し、安定した収入を得ることができます。

 

また、積立型の生命保険に加入している場合は、解約して解約返戻金を受け取る方法や、契約者貸付制度を利用して一時的に資金を借りる方法もあります。

 

さらに、親が認知症になった後の資産管理が心配な場合は、民事信託を活用することで、親の意思を反映させながら円滑に管理・運用を行うことが可能です。

 

このように、親の資産を有効に活用することで、将来の介護費用を確保する選択肢が広がります。

 

ただし、親が認知症などで判断能力が低下してしまうと、契約行為ができなくなる可能性があります。

 

そのため、元気なうちにしっかりと対策を考えておくことが大切です。

 

軽減制度を活用する

 

軽減制度を活用する方法もあります。収入かつ資産が少ない場合、公的介護保険施設に入所した場合、「補足給付」によって食費や居住費が軽減される可能性があります。

 

例えば、単身世帯で年金収入のみ毎月5万円、要介護5(ユニット型個室)だった場合どうでしょうか。

 

補足給付の対象にならない場合、月額合計は、約143,980円です。以下内訳:

 

  • 施設サービス費の1割

28,650円(955単位×30日=28,650

  • 居住費  

61,980円(2,066円/日)

  • 食費

43,350円(1,445円/日)

  • 日常生活費 

10,000円(施設により設定されます。)

 

 

補足給付の対象になると、月額合計は、約76,750円です。以下、内訳:

  • 施設サービス費の1割

28,650円(955単位×30日=28,650

  • 居住費  

約26,400円(880円/日)

  • 食費

約11,700円(390円/日)

  • 日常生活費 

10,000円(施設により設定されます。)

 

 

補足給付の対象か否かで半分以上費用が変わってきます。

 

つまり、預貯金等の多さで補足給付の対象か否かになります。預貯金等には、生命保険や車などは対象外になっています。

 

なお、高額介護サービス費もあり、自己負担の上限額を超えた分は、おおよそ3カ月後に戻ってきます。

 

以下、税控除を含めたその他の軽減制度です。

  • 高額介護サービス費
  • 高額介護療養合算制度
  • 高額療養費制度
  • 医療費控除
  • 障害者控除(障碍者手帳を持っていない場合、障害者控除対象者認定書の申請・交付)
  • 各自治体の独自施策など

※参考 サービスにかかる利用料 厚生労働省

※参考 介護給付費単位数等サービスコード表 (令和6年6月・8月施行版)

まとめ

ここまでの内容を読んで、「では、うちの場合はどの方法がベストなのか?」と悩む方も多いと思います。

 

公的機関では制度の説明や適切な機関の紹介などはしてくれますが、「あなたの家計でどう払えばいいか」は教えてくれません。

 

FPに相談すれば、親の年金・資産・家計を分析し、最適な支払い方法を提案することができます。

 

また、兄弟間の負担の分け方についてもアドバイスを受けることができるため、家族内のトラブルを未然に防ぐことができます。

 

さらに、民事信託や任意後見制度の違いなど、資産を活用する方法についても具体的な提案が可能です。

 

特養の費用は月5万円~15万円程度ですが、収入や資産状況によって実際の負担額は異なります。

 

まずは、親の年金だけで足りるかを確認し、不足分がある場合は貯金・家族負担・資産活用・軽減制度の活用など、どの方法が適しているかを考えましょう。

 

介護は長期戦になることも多いため、早めに準備をすることが大切です。

 

「親の年金だけで足りるか不安」「どの方法がベストなのかわからない」と感じたら、公的機関に相談しながら、一度FPに相談してみるのもひとつの手です。