介護が始まると、その現実に直面して初めて気づくことが多いです。
特に「まだ早い」と思っていた頃には、まさか自分がこんなにも大変な思いをするとは考えていなかったというのが実情です。
私自身も親の介護を始めてから、その準備の重要性に痛感した一人です。
今回は、身近な人が介護を始めて気づいた「準備しておけばよかったこと」について、いくつかの事例を通じてお話ししたいと思います。
兄弟間で遺産を巡って揉めた事例

ある家族には3人兄弟がいました。
長男は母親と同居しており、他の兄弟はそれぞれ家族を持ち、別々に暮らしていました。
母親が介護が必要な状態になったとき、長男は早期退職をして母親の介護を始めました。
母親は施設に入ることを拒否し、長男が一人で面倒を見続けました。
介護をしている間、兄弟はたまに顔を見せる程度でした。
そのとき、兄弟たちは「お兄ちゃんが面倒を見ているのだから、お母さんの財産は全部もらって当然だよ」と言っていました。
しかし、母親が亡くなった後、遺産分割の話が始まると、兄弟たちは突然態度を変え、法定相続分を主張するようになりました。
「お兄ちゃんは実家に住んで家賃も払っていなかった」などという理由で、遺産分割を巡る揉め事が起き、最終的には関係がぎくしゃくし、絶縁状態にまで発展しました。
この事例では、遺言書などの準備をしていなかったため、家族間での揉め事が生じ、家族関係が壊れてしまいました。
介護を始める前に、家族間での意見の調整などをしっかりと行っておけば、こんな事態を防げたかもしれません。
父親の介護と成年後見制度の問題
もう一つの事例では、両親と子どもの3人家族の方です。
父親が突然倒れて、要介護4の状態になったことがきっかけです。
父は倹約家で、長年にわたってしっかりと財産を貯めていました。
私は介護のための相談先などに関しては、ある程度人脈を持っていたので、スムーズに対応できました。
しかし、父親の財産管理のために金融機関に行った際、成年後見制度の利用を勧められました。
成年後見制度を利用することで、法的に父親の財産管理ができるということでしたが、実際に調べると、後見人の報酬が毎月2~3万円かかることや、家庭裁判所が後見人を選任したり、自由に制度の利用をやめることができない等の制約があることがわかり、結局この制度は見送りました。
事前に父親と財産管理について話し合っていなかったことが、後になって問題を引き起こす原因となりました。
介護が始まる前に、財産管理に関して計画的に対処していなかったことを反省しています。
財産管理の重要性を再認識

相談者の中には、介護を始める中で「財産管理」の重要性を再認識された方がいらっしゃいます。
親が認知症を患うと、金銭的な管理が困難になり、親の財産がどこに、どれだけあるのか、どんな契約をしているのかもわからなくなります。
こうした問題を未然に防ぐために、事前に親の財産を整理しておくことが非常に大切であることを、この方は介護を通じて痛感されました。
また、介護に関連する公的支援や施設への費用がどれだけ必要になるのかを予測していなかったため、金銭面での負担が大きくなりました。
事前に親と財産や介護費用について話し合い、準備をしておけば、後の介護生活はずっとスムーズに進んだだろうと感じていらっしゃいます。
この経験を通じて、財産管理と介護費用の準備がいかに重要であるかを深く認識されました。
家族間での話し合いを早く始めておけばよかった

介護が始まると、家族間での意見が一致しないことがよくあります。
誰がどの役割を担うのか、どこまで手を出すべきか、金銭面での負担をどう分けるのか、事前に話し合って決めておかないと、後でトラブルになります。
例えば、ある家庭では、主な介護者が決まっていなかったため、急に高額な介護サービスを利用することになり、誰がその費用を負担するのかが明確でなかった結果、家族間で不満が溜まり、関係がぎくしゃくしてしまいました。
「今の家計には余裕がない」「子供の教育費がかかっていて支援できない」など、家族一人一人が支援できない理由を挙げるばかりで、結局誰も介護費用を支援したがらないという状況が問題を引き起こしました。
このような事態を避けるためにも、事前に「介護にかかるお金」について話し合い、誰がどれくらい負担するのかを決めておけば、家族間の不満や亀裂を防げたのではないかと反省しています。
さらに、介護の負担を一人に集中させず、家族全員で協力して支えることが大切です。
もしも事前に家族全員が協力し合う体制を作っておけば、介護する側が精神的・身体的に疲れてしまうこともなく、家族関係が壊れることもなかったかもしれません。
介護にかかる費用の予測が甘かった

介護費用について、正確に予測することは不可能ですが、あまりにも考えていなかったことは大きな後悔の一つです。
介護はお金がかかります。
特に施設に入ることになった場合、その費用は膨大です。
しかし、当初は「公的支援や介護保険である程度カバーできるだろう」と安易に考えていました。
実際には、有料老人ホームなどの介護施設に入居した場合、予想以上に費用がかかり、おむつ代を含む保険適用外のサービスも多く、家計に大きな影響を及ぼしました。
さらに、介護の必要度が高まり、サービスの質を重視すれば費用が一層高くなることにも気づきました。
加えて、親が病気で入院した際、入院中に戻れるよう部屋を確保するための費用もかかり、二重負担が一時的に発生する可能性もありました。
事前に介護にかかるおおよその費用を試算しておけば、より現実的な準備ができたのではないかと反省しています。
介護の現実を直視する重要性

最後に痛感したのは、「介護が必要になるという現実を早めに直視すること」の重要性です。
介護という言葉を聞くと、どうしても「まだ先のこと」と思いがちですが、実際に介護が必要になったときには時間が足りなくなってしまいます。
介護が始まる前に、親がどんな医療を受けているのか、介護が始まったときの相談先はどこか、親の財産をどう利用するのか、家族でどう協力するのか等をしっかり考えておくことで、実際の介護生活がずっと楽になります。
事前に準備しておけば、精神的な負担も軽く、親の生活もより良いものにできるはずです。
親の介護費用は、親の財産から賄うのが原則です。
そのためには、親の財産状況や収入を把握する必要があり、親が亡くなった後の財産整理だけではなく、介護を見据えた財産の活用法も考えておかなければなりません。
こうした事前の準備が、実際に介護が始まったときの大きな支えとなることでしょう。
まとめ

介護は予測できないことが多く、実際に始まってみるとその大変さに圧倒されることがあります。
しかし、事前にしっかりと準備をしておけば、介護生活は格段にスムーズに進みます。
具体的には、介護になったときの相談先(地域包括支援センター)、親の財産管理、家族間での話し合い、そして介護にかかる費用の予測など、早期に取り組んでおくことが重要です。
これらを事前に整えておくことで、急な事態に慌てることなく、後悔せずに介護を迎えることができるはずです。
また、親の財産管理に関しては、介護費用をどのように賄うかを考え、親の財産状況や収入の把握を進めておくことが不可欠です。
介護を見据えた財産の活用法も、早めに考えておくべき重要なポイントです。
今からしっかりと向き合い、準備を進めていくことを強くおすすめします。
準備が整うことで、介護生活が少しでも楽になり、親も家族も安心して過ごすことができるでしょう。
また、介護や生活に関するさまざまなテーマについて、介護ポストセブンでも取り上げています。こちらの記事もぜひご覧ください。
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- 親の年金額と貯蓄額を把握している
- 親が要介護になった場合、どのくらいの費用がかかるか試算したことがある
- 介護費用をどこから出すのか(親の資産、子どもの援助など)決めている
- 親の銀行口座や財産を管理する方法(家族信託、成年後見など)を考えている
- 親が認知症になったときの財産管理・手続きをどうするか決まっている
- 介護施設に入る場合の費用や条件を調べたことがある
- 介護費用の公的支援制度(高額介護サービス費、税控除など)を理解している
- 兄弟姉妹と、介護費用や負担について話し合ったことがある
- 介護が必要になったとき、誰が主に対応するのか家族で合意している
- 親と「介護が必要になったときの希望」について話したことがある
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