最近、見かけなくなったと思っていた方が、認知症を発症して施設に入ったと聞いて驚きました。
その方は80代後半の女性で、ご主人を数年前に亡くされていましたが、以前はとても元気な様子でした。
水泳に通ったり、活動的に過ごされており、朝お会いした際にも、いつも明るく一言二言お話をされていました。
そんな姿を見て、歳を重ねても元気でいられるものだと感心していました。
しかし、数カ月前に朝お会いした際、突然「どちら様?」と尋ねられたことがありました。
耳を疑いましたが、急いでいたため深く考えず、軽く会話をしてその場を離れました。
その時は元気そうに見えたので特に気に留めなかったのですが、後になって認知症を発症し、施設に入ったと聞いて衝撃を受けました。
このように、80代半ばを過ぎると、いつ認知症を発症したり、倒れて介護が必要になったりするか予想がつきません。
一つ確かなのは、日を追うごとに体力は低下していくということです。
『東大がつくった高齢社会の教科書』によると、男性の約2割は70歳になる前に健康を損ね、死亡するか重度の介助が必要な状態になります。
一方で、約1割の男性は80歳、90歳になっても健康を維持し続けることができるとされています。
残りの7割は、75歳頃から徐々に自立度が低下していく傾向があるといいます。
女性の場合も同様に、約9割の人が70代半ばからゆるやかに自立度が低下していくと指摘されています。
男性は心臓病や脳卒中などの生活習慣病による影響が大きいのに対し、女性は骨や筋力の衰えといった運動機能の低下によって自立度が落ちる傾向があるとされています。
全体としては、男女あわせて約8割の人が70代半ばを境に、何らかのサポートが必要な状態になっていくことが分かります。
ただし、これは即座に要介護や認知症になるという意味ではなく、何らかの病気や身体の不具合を抱えながらも、工夫をしながら日常生活を続けている状態を指します。
外見上は元気に見えても、実際には何らかの不調を抱えていることが多いため、家族はしっかりとサポートの準備をしておくことが重要です。
特に、認知症の有病率を見ても、80歳から84歳の段階では男性が15.9%、女性が16.9%と比較的低めですが、85歳から89歳になると男性で25.2%、女性では37.2%と急激に増加します。
※参考「認知症及び軽度認知障害の有病率調査並びに将来推計に関する研究」令和5年度老人保健事業推進費等補助金
つまり、70代半ばでは「まだまだ元気だから大丈夫」と思っていても、実際には年々体力や認知機能が低下しており、80代半ばを過ぎた頃には認知症を発症している可能性も高まります。
特にアルツハイマー型認知症は徐々に進行するため、発症時期がはっきりしないことも少なくありません。
だからこそ、早めに対策を講じることが大切です。
たとえば、80歳を超えた親が一人暮らしをしている場合、見た目が元気でも安心せず、家族で早急に話し合いをすることが求められます。
元気なうちから、今後の生活や介護について具体的に考え、準備を進めることが、本人の安心につながるだけでなく、家族にとっても大きな支えになるのです。

80代の親の介護の準備
Aさんの83歳の母親は、数年前に夫を亡くし、一人暮らしを続けています。
Aさんには兄弟のBさんがいますが、二人とも地元を離れて生活しており、直接母親を支えることが難しい状況です。
ただし、AさんはBさんよりも実家に近い場所に住んでおり、緊急時には比較的早く駆けつけることができます。
父親が亡くなった当初、Aさんは月に1回帰省して母親の様子を見ていましたが、最近では2カ月に1度の帰省に減っています。
一方、Bさんは体調が思わしくなく、体調の良いときに帰省する程度で、年に1回ほどしか実家に帰れていません。
それでもAさんは、定期的に電話で安否確認を行い、母親はまだ元気だと認識しています。
しかし、80歳を超えると、いつ何が起こるかわかりません。
特に、介護は突然襲ってくることが多く、何の準備もないまま直面すると、大きな負担となります。
このまま何も対策をしなかった場合、AさんとBさんのどちらに負担がかかるでしょうか。
一般的に、実家の近くに住んでいる、独身で自由がきく、母親との関係が深い子どもが、介護の中心的な役割を担うことが多いです。
AさんとBさんの状況を考えると、Aさんに負担が集中する可能性が高いでしょう。
介護が始まると、単に身の回りの世話をするだけでなく、介護保険の手続き、介護サービス事業者との交渉、病院への付き添いなど、さまざまな対応が求められます。
さらに、介護にかかる費用を誰が負担するのか、実家への帰省費用、仕事の調整や休暇取得など、経済的・時間的な負担も発生します。
せっかくの休日が介護に追われることも珍しくありません。
また、当事者以外の家族は意外と無関心だったり、無責任な発言をしたりすることもあります。
特に、介護費用が不足した場合、Aさんが自由に母親のお金を使っていたのではないかとBさんが疑念を抱く可能性もあります。
こうした金銭面のトラブルは、家族関係に深刻な影響を与えかねません。

家族間のコミュニケーションが大切
介護は、実際に経験しないと分からないことが多く、後手に回ると、精神的・肉体的に大きな負担となります。
だからこそ、今のうちに家族で話し合い、介護が必要になった場合の役割分担や費用の管理方法を決めておくことが重要です。
母親の介護をAさんが中心となって担う可能性が高い場合、どのような対策が必要でしょうか。
最も大切なのは、兄弟間のコミュニケーションです。
地元を離れて生活し、それぞれの家庭を持つと、兄弟で話す機会が減ることが多いため、意識的に連絡を取り合うことが求められます。
Aさんが帰省するたびにBさんと電話で母親の状況を共有するのも一つの方法ですが、それが難しい場合は、LINEなどでグループを作り、母親の様子や写真を共有するのも効果的です。
重要なのは、情報を共有し、介護について話し合う土台を作ることです。
話し合いは一度きりではなく、繰り返し行うことが理想的です。
忙しい中でも少しずつ話を進め、状況や経済的な事情を考慮しながら、親の意向を尊重した上で納得のいく形を決めていきましょう。
また、親の財産状況を把握しておくことも重要ですが、親に対して無理に財産の開示を求めたり、管理を強要したりしないよう注意が必要です。円滑な話し合いができるよう、慎重に進めることが大切です。
さらに、誰が中心となって介護の対応するのかを決める必要があります。
このケースでは、Aさんが主体となり、Bさんがしっかりとサポートする形が望ましいでしょう。
ただし、一人にすべての負担が集中しないよう、適切に役割を分担することが重要です。
これは、事前に決めておくことが大切です。
また、介護費用の管理についても準備が必要です。
原則として、母親の財産から賄いますが、母親が自分でお金を引き出せなくなる可能性もあります。
そのため、代理人カードなどを作成しておくと便利です。
さらに、母親が認知症になった場合に備え、任意後見制度や民事(家族)信託を検討しておくことも有効です。
認知症になると預金の引き出しや自宅の売却が難しくなり、介護費用の不足を補うために子どもが立て替える負担が生じる可能性があります。
こうした事態を防ぐためにも、早めに対策を講じておくことが望ましいでしょう。
これらの方針がある程度決まったら、合意書を作成しておくのも有効です。
これにより、決めた内容を忘れることを防ぎ、家族全員が共通の認識を持つことができます。
ただし、合意書は状況が変わった際に見直し、柔軟に対応するためのものです。
年に1度程度、家族で内容を確認し、必要に応じて更新していくことで、実情に合った形で運用していくことが重要です。
決して罰則を設けるものではなく、家族間の協力を促し、円滑に介護を進めるための手段として活用しましょう。

まとめ
80代を超えると、健康状態が急に変化することがあります。
認知症や体力の低下が進み、介護が必要になる可能性も高まります。
このような状況に備えるためには、家族間で早めに話し合い、介護の役割分担や費用・財産管理について準備を進めることが重要です。
- 「何から手をつければいいかわからない」
- 「親の財産管理について家族で話し合いたい」
- 「認知症になったらどうするべき?」
こうした悩みをお持ちの方は、一度当事務所に相談してみませんか?
まずは、お気軽にご相談ください。
また、介護や生活に関するさまざまなテーマについて、介護ポストセブンでも取り上げています。こちらの記事もぜひご覧ください。
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