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障害者控除対象者認定書だけでは足りない?介護費用をカバーするための資産形成術

介護が必要な家族を抱えると、介護費用が家計に与える影響は計り知れません。

 

特に、要介護状態である65歳以上の場合、身体障害者手帳を持っていなくても、障害者控除を受けることができます。

 

しかし、この障害者控除などの税制優遇措置だけでは、長期的に発生する介護費用を賄うには十分でないことが多いです。

 

そこで、障害者控除を上手に活用しながら、介護費用に備えるための資産形成術を取り入れることが重要です。

 

本記事では、介護費用を効果的に準備するための資産形成の方法を詳しくご紹介します。


介護費用の現実を知る

介護が必要になると、日常生活の支援が不可欠となります。

 

公的介護保険を利用することである程度の負担軽減はできますが、要介護度が高くなるにつれて自己負担額が増えていきます。

 

例えば、訪問介護やデイサービス、ショートステイなどを利用する際、1割〜3割の自己負担が発生します。

 

さらに、介護保険サービス以外にも、配食サービスやおむつ代などが必要になります。

 

また、介護期間が長引くほど介護にかかる総額は増加し、高額になることが一般的です。

 

特に、認知症や身体的障害が進行すると、長期間にわたる介護が必要となり、金銭的な備えがますます重要になります。

 

さらに、有料老人ホームへの入居や、家をバリアフリー化するためのリフォーム費用も考慮しなければならず、介護にかかる費用は予想以上に高額になることが多いです。

 

現実的には、高額介護サービス費や高額療養費などの支援制度、また障害者控除などの所得税軽減措置だけでは、十分にカバーできるとは限りません。


障害者控除対象者認定書とその限界

障害者控除は、税制上の優遇措置として、障害を持つ方やその家族に対して適用されるものです。

 

この控除を受けることで、所得税や住民税の軽減が期待できます。

 

特に、身体障害者手帳を持っている方は、すでに税金の軽減を受けていることが多いですが、手帳を持っていない方でも適用の可能性があります。

 

65歳以上で要介護認定を受けている場合、お住いの自治体に障害者控除対象者認定書を申請し交付を受けることで、障害者控除が適用されます。

 

注意点として、この障害者控除対象者認定書の基準は各自治体によって異なります。

 

例えば、X自治体では「要支援・要介護に認定され、介護保険の認定調査票記載の障害高齢者の日常生活自立度がA以上」とされている場合があり、Y自治体では「要介護123(食事や排泄など、常時介護を要しない)ただし、特別障害者に準ずる者を除く」といった基準もあります。

 

また、障害者控除対象者認定書を取得すると、税法上の障害者として扱われることになり、所得税や住民税の軽減が受けられるだけでなく、前年中の合計所得金額が135万円以下の方が住民税非課税となるという大きなメリットがあります。

 

例えば、要介護2の方(自治体で障害諸控除対象者認定書が可の場合)が障害者手帳を持っていない場合でも、年金収入のみで240万円の場合、お住いの自治体で障害者控除対象者認定書を申請し交付を受けることで、年収は変わらないのに住民税が課税されず、介護保険料や高額介護サービス費、高額療養費の上限額が低くなり、経済的な負担が軽減されます。

 

しかし、税法上の障害者となっても、控除や軽減措置には限度額があり、介護にかかる全ての費用をカバーできるわけではありません。

 

障害者控除対象者認定書を活用することは重要ですが、あくまで税金や公的支援の軽減措置に過ぎないため、介護費用を長期間継続的に支払うためには、他の資産形成の方法を検討することが必要です。


介護費用をカバーするための資産形成術

介護にかかる費用をカバーするためには、早い段階での資産形成が不可欠です。

 

また、介護費用がいくら必要かもシミュレーションしておく必要があります。

 

以下に、介護に備えるための具体的な方法を紹介します。

 

1. 長期的な貯蓄計画を立てる

介護費用は早い段階から見据えて準備することが大事です。

 

介護は突然、襲ってきます。

 

したがって、長期的な視野で貯金をすることも一つの方法です。

 

例えば、毎月一定額を貯金に回すことで、介護が必要になった時に必要な資金を準備できます。

 

概ね80歳以降に介護になると考えると、今の年齢から80歳になるまでの期間を計算して、毎月、いくらずつ積み立てる必要があるのか、年金生活になったら金額をどのくらいに変えるのかなどシミュレーションしてみることが大切です。

 

2. 介護資産を増やすための投資

ただ、貯金をするだけでは、インフレなどの影響で実質的な資産価値が減少してしまう可能性があります。

 

そのため、介護費用を長期的にカバーするためには、投資を活用することが有効です。

 

NISAを活用して、投資信託などを利用することで、貯金よりも高いリターンを狙うことができます。

 

ただし、投資にはリスクが伴うため、慎重に運用する必要があります。

 

あくまでも長期間の投資が必要であることを念頭に、複数の投資先に分けて運用したり、時間分散することも必要です。

 

生活資金や緊急資金以外に介護のための資金として長期間淡々と続ける資金ということが大切です。

 

3. 民事(家族)信託を活用する

家族信託は、介護費用を賄うための資産管理の一つの方法として有効です。

 

家族信託を利用することで、親の資産を信託として管理し、介護が必要になった際にその資産を利用して費用を賄うことができます。

 

信託を設定することで、親が認知症や病気で判断能力が低下した場合でも、家族がその資産を管理しやすくなります。

 

また、遺産相続にも関わるため、早い段階で家族間での話し合いをしておくことが重要です。

 

4. 任意後見契約

任意後見契約は、将来に備えて、判断能力があるうちに信頼できる人を後見人として指定しておく制度です。

 

この契約により、財産管理や医療・介護に関する手続きなどを、あらかじめ選んだ相手に任せることができます。

 

認知症などによって判断能力が低下した際に備えるための法的な手段であり、任意後見契約を結んでおくことで、自分の希望に沿った支援を受けやすくなり、財産の管理や介護契約に関する不安を軽減することができます。

 

5.民間介護保険を活用する

民間の介護保険を活用することも、一つの選択肢として検討する価値があります。

 

特に、まとまった資金がない場合や、預貯金や資産運用での準備が難しい場合には、掛け捨て型で保険料が比較的安い民間介護保険の加入が選択肢となります。

 

ただし、希望すれば必ず加入できるわけではなく、健康状態や年齢などにより加入を断られる可能性があることや、給付条件を満たさなければ保険金や給付金を受け取れない点には注意が必要です。

 

 

また、民間介護保険は、預貯金や資産運用と併用して活用することも可能です。

 

例えば、若いうちは資産が十分でなくても保険で備え、将来的にお金が貯まったら保険契約を見直すといった柔軟な対応も選べます。


まとめ

介護費用を賄うためには、障害者控除対象者認定書だけに頼るのではなく、長期的な貯蓄や投資、家族信託などの資産形成術を取り入れることが不可欠です。

 

介護が始まる前に準備をし、介護費用に対応できる資産計画を立てておくことが、将来的な安心につながります。

 

早期に計画を立て、実行に移すことで予期しない費用負担を軽減できます。

 

将来に備えるため、まずは無料相談であなたの状況をお聞かせください。お気軽にご連絡ください!

 

また、介護や生活に関するさまざまなテーマについて、介護ポストセブンでも取り上げています。こちらの記事もぜひご覧ください。

 

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