医療保険や介護保険などの保険に入っていて給付金を受け取ると、なぜか得をしたような気分になることがあります。
「入っていて良かった」と思う瞬間です。
例えば、病気で入院し、保険会社から10万円、20万円などといった給付金が支払われたとき、まとまったお金が自分の口座に振り込まれることになります。
それは確かに、自分の預貯金を切り崩さずに済んだという意味で安心感をもたらしますし、「これは保険のおかげだ」と実感する体験でもあります。
こうした“臨時収入”のような感覚が、「保険ってお得なんだ」という印象を与えるのです。
さらに、この「お得感」を支えているもう一つの要因があります。
それは、保険料という支出に対して、私たちがあまり強く「お金を使っている」という実感を持っていないことです。
保険料は毎月、一定額が自動的に口座(もしくはクレジットカード)から引き落とされていきます。
そのため、一度保険(加入するときにはハードルが高い)に加入してしまえば、生活費の中に保険料が自然と組み込まれていき、あたかも「もともと使えないお金」として扱われるようになります。
意識的に支払っているというよりも、「いつの間にか払っていた」という感覚に近いため、長年支払い続けていても、あまり負担に感じないのです。
このように、実際には数百万円にのぼる保険料を支払っていたとしても、その金額が生活の中で「見えない支出」として扱われていることで、給付金を受け取ったときの満足感はより大きくなります。
「何も出していないのにお金がもらえた」ように錯覚してしまうのは、まさにこの心理のトリックです。
その給付金は天から降ってきたお金ではなく、長年にわたって支払い続けてきた保険料によって成り立っているからです。
目の前に現金が入ってくると、これまで支払ってきた保険料のことを一瞬忘れてしまいがちですが、保険は本質的に「相互扶助」によって成り立っています。
そのため、給付金は自分が支払ってきた保険料の一部が返ってくる場合もあれば、支払った以上の金額を受け取ることもあります。
また、逆に全く給付金を受け取らない場合もあるということです。
「もらえるお金」と「払ってきたお金」を比べてみると

仮に、毎月5,000円の医療保険料を30年間支払っていた場合、その総額は180万円になります。
この間に何度か給付金を受け取ったとしても、その合計が180万円を超えることは稀ではないでしょうか。
中には、支払った保険料以上の給付金を受け取ることができた人もいるかもしれませんが、それはごくわずかなケースと言えるでしょう。
もちろん、給付金を一度も受け取らずに終わる人も多いはずです。
つまり、保険を通じて「お金がもらえた」という体験は、多くの人は、その支払ってきた保険料の一部が返ってきただけであり、「得をした」というよりは「損失が一部戻ってきた」に近いのです。
それでも得したように感じるのは、「自分の貯金を使わずに済んだ」ことに対する心理的な安堵感や、給付金が突然入ってくることによる「臨時収入」感覚が大きいからです。
一方、保険に入っていない場合、病気や介護が必要になったときにかかる費用は、すべて自分の預貯金から捻出しなければなりません。
実際に「通帳の残高が減っていくことは心理的に大きなストレス」になります。
逆に、保険に加入していて給付金で費用を賄える場合、まとまったお金が減らずに済むため、心理的な余裕が生まれます。この違いが、保険の「効力」を実感させ、満足感を生み出しているのではないでしょうか。
保険は「お守り」であって「投資」ではない

ここで大事なのは、保険に対して「投資的な期待」を持たないことです。
つまり、「いくら払って、いくら戻ってきたから得だ・損だ」と損益計算をしすぎると、保険の本来の役割が見えなくなってしまいます。
保険は、突然の出費に備える「お守り」のような存在であって、得をするための金融商品ではありません。
必要なときにお金を払わずに済む、あるいは生活に支障が出ないように支えてくれる、そういった安心感を得るための仕組みです。
特に介護や認知症といった、長期間にわたる費用がかかるケースでは、保険の有無が家計に与える影響は大きくなります。
預貯金が潤沢にある家庭なら問題ないかもしれませんが、年金と少しの貯蓄で生活している高齢者にとっては、保険の給付金は非常にありがたい存在になります。
ただし、それはあくまで、これまで保険料を支払ってきたからこそ受けられる保障です。
見えないところで長期間積み立ててきたお金が形を変えて戻ってきたに過ぎない、という視点は忘れないようにしたいところです。
介護費用と保険のバランスを考える

実際のところ、介護にかかる費用は思ったよりも高額になることが多く、特に要介護度が高くなる等、毎月の支出は増えていく場合があります。
自宅介護であっても、介護サービスや用品、リフォームなどにお金がかかりますし、施設に入るとなると、公的施設であっても月額15万円~20万円が当たり前です。
こうした出費に対して、保険の給付金だけではまかないきれないこともあります。
だからこそ、保険に頼り切るのではなく、全体のライフプランの中で、どのように介護費用を準備するかを考えることが大切です。
保険の給付金で「助かった」と思える場面は確かにあります。
ただ、多くの人は、それは、「長年積み立ててきたお金の一部が戻ってきただけ」、という事実を忘れずに、自分たちの家計に本当に必要な保障内容と金額を見直してみることも必要です。
「得をしたような気がする」ではなく、「無理のない範囲で備えができているか」を判断の基準にすることで、将来の安心感につながっていくはずです。
まとめ
「まだ元気だから大丈夫」と思っていても、介護や医療の問題はある日突然やってきます。
早めに備えておけば、いざというときに慌てずに済みますし、家族の負担も減らすことができます。
迷ったときこそ、小さな一歩を踏み出すチャンスです。
「保険」や「お金」のことは難しく感じるかもしれませんが、丁寧にわかりやすくお手伝いしますので、お気軽にご相談ください。
また、介護や生活に関するさまざまなテーマについて、介護ポストセブンでも取り上げています。こちらの記事もぜひご覧ください。
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