昨日の記事では、杉並区内の有料老人ホームを10施設ご紹介しました。
杉並区は都心からのアクセスもよく、治安や環境の良さから高齢者にも人気のエリアです。
その分、有料老人ホームの費用も都内の中では比較的高めの水準になっています。
ご紹介した施設の費用は、おおむね月額25万円から40万円前後が中心で、入居時に必要な一時金がかかる施設もあれば、一時金なし、併用の施設もあります。
また、公的介護保険サービス費用やおむつ代などを考慮した場合、おおむね月額30万円~45万円くらいを予想しておくといいでしょう。
では、この金額での生活を、実際に年金だけでまかなうことはできるのでしょうか?
ファイナンシャル・プランナー(FP)の視点で、実際のケースをもとに考えてみましょう。
平均的な年金受給額と、費用とのギャップ

まず前提として、多くの方が老後の生活費にあてにしているのが「年金」です。
ただし、この年金がどのくらいもらえるかは、その方の現役時代の収入や加入年数によって大きく変わります。
厚生労働省の統計によると、令和5年度の厚生年金の平均受給額は147,360円。
一方、国民年金(自営業など)の場合は月平均で58,000円となっており、大きな差があります。
夫婦で年金を受給している世帯であれば、2人合わせて月25万〜30万円程度となることもありますが、施設に入る段階では配偶者がすでに他界しているか、自宅での生活を選んでいる可能性が高く、単身での生活資金として考える必要があります。
仮に厚生年金をしっかり受け取っている方でも、月15万円程度が多くの方の現実的な水準です。
そうなると、月25万円の施設に入居する場合、毎月10万円の赤字が生じます。
さらに、介護保険サービス利用料や日用品費、医療費、おむつ代などで月5万円ほどの支出が見込まれ、実質的な赤字は月15万円近くに膨らむ可能性もあります。
老後資金はいくらあれば安心なのか?

単純計算で、毎月10万円の不足があると、年間で120万円。
仮に有料老人ホームで5年~10年間生活すると考えると、600万~1200万円の追加資金が必要になるということになります。
それに加えて、介護保険サービス利用料や医療費、おむつ代などで月5万円(年間60万円)を見込むと、5年間の場合は300万円、10年間で600万円が上乗せされ、総額900万~1,800万円の自己負担を想定しておく必要があります。
つまり、年金だけでは明らかに足りないというのが現実です。
安心して暮らしていくには、相応の老後資金を事前に準備しておく必要があります。
足りない分はどうやって準備するのか?

ここで重要になるのが、「不足分をどう補うか」という視点です。
年金だけでは賄いきれない場合、一般的なご家庭では以下のような選択肢を組み合わせて対応していくことになります。
- 入居一時金への備え
施設によっては、入居時に数百万円〜数千万円の一時金が必要となるケースがあります。
この一時金は、月額費用とは別に「前払い金」として支払うもので、契約期間中の家賃に充当されたり、一定期間を過ぎると返還されなかったりすることもあります。
このようなまとまった資金を準備するには、「定期預金の活用」・「不動産の売却資金を充てる」・「退職金や遺す予定のお金を充てる」といった方法が現実的です。
契約前に一時金の扱いや返還規定をしっかり確認することが大切です。
- 貯金の取り崩し
最も多く選ばれるのが、老後資金として準備していた預貯金の取り崩しです。
ただし、これまでの資金計画は多くの場合「自宅で生活を続ける」ことを前提にしており、施設入居により想定以上のペースで資産が減っていくリスクもあるため、慎重な資金管理が必要です。
次に検討されるのが、不動産の活用です。
たとえば、親がかつて住んでいた家を賃貸に出す、あるいは売却することで、まとまった介護資金を確保する方法があります。
特に、杉並区のように地価が高いエリアでは、こうした不動産の活用によって大きな資金を生み出す可能性もあります。
ただし、売却には時間がかかることもあるため、早めの検討が大切です。
- その他の資産の活用
そのほかにも以下のような手段が考えられます。「有価証券の売却」・「生命保険の解約返戻金を活用」・「
子どもが費用を一部分担」・「民事信託や成年後見制度の活用による資産管理の適正化」などです。
これらは状況に応じて適切な方法を選ぶ必要があり、早めの相談が安心につながります。初回20分無料相談はこちらから
「子どもが出す」前提は、危険な思い込み?
介護費用について、「いざとなれば子どもが何とかしてくれる」という感覚を持っている親世代の方は少なくありません。
しかし、子ども側にも住宅ローンや教育費、生活費などの負担があり、「親の介護費用までは出せない」というのが現実です。
また、兄弟姉妹間で費用の分担をどうするかで揉めるケースも非常に多く見られます。
一時金は長男が出した、日々の支払いは次男がしている…など、不平等感が蓄積されると、親の介護がきっかけで兄弟仲が壊れることも。
そうならないためにも、早い段階で「親のお金でどう備えるか」を考えておくことが重要です。
これは感情ではなく、お金の計算として現実的に考えることが、家族みんなの安心につながります。
FPとしてお伝えしたいこと

施設選びや年金の使い方は、非常に個別性の高い問題です。
年金が多めに出る方もいれば、貯蓄や不動産に恵まれていないケースもあります。
私自身、相談を受ける中で感じるのは、「介護が始まってから慌ててしまう方が多い」ということです。
後から「もう少し早く動いていれば…」と感じるケースは少なくありません。
介護は突然始まることが多く、準備をしていなければ「選べない・慌てて決める・後悔する」という三拍子が揃いやすくなります。
まずは、自分や親の年金額、資産、そして将来の生活イメージを把握すること。
そのうえで、杉並区のような人気エリアの施設費用が現実的にまかなえるかどうか、冷静に見つめてみましょう。
まとめ

杉並区の施設費用は、東京都内でも比較的高めかもしれません。
そのため、費用について考えると、不安に感じる方もいらっしゃるかと思います。
でも、だからといって「無理かもしれない」とすぐにあきらめる必要はないと思います。
事前に情報を集めたり、準備を進めておくことで、希望する地域や施設も選択肢に入ることがあります。
昨日ご紹介した施設の記事を参考にしながら、「うちの場合はどうだろう?」と一度考えてみるきっかけになれば嬉しいです。
もし「自分の家族の場合、どうすればいいんだろう?」と考えたことがあれば、ぜひ一度お話ししてみませんか?
実際にご相談いただくことで、財産管理を含めて具体的な選択肢や対応方法が見えてくることがあります。
介護費用や施設選び、財産管理などについて不安に感じている方は、ぜひお気軽にご相談ください。
事前にしっかり準備しておけば、後で慌てることなく、自分に合った選択をすることができます。
また、介護や生活に関するさまざまなテーマについて、介護ポストセブンでも取り上げています。こちらの記事もぜひご覧ください。
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